2022 Fiscal Year Research-status Report
税制が多国籍企業の無形資産の保有地選択に与える影響
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22K13519
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
岩崎 瑛美 松山大学, 経営学部, 准教授 (20824577)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際課税 / BEPS / 多国籍企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては,BEPSの効果や影響を検討する上で有益な示唆を提供することを目的として,近年の国際課税上のルールを概観し,国際課税に関する国内外の実証研究を整理した。国際課税に関する実証研究では,企業グループ全体としての税負担を削減するために,多国籍企業が無形資産や知的財産を利用した所得移転を行っていたことが明らかになった(De Simone et al. 2019)。しかし,無形資産や知的財産に焦点を当てた研究については,BEPSプロジェクトによる制度変更が実施される前の分析が行われており,BEPSプロジェクトにより多国籍企業の税務行動に変化があるかどうかを検証する必要があることを指摘した。また,BEPSプロジェクトより導入された国別報告書(Country-by-Country reporting)に,税金の透明性向上に資する一定の効果があることが観察された(Joshi 2020; Joshi e al. 2020)。 このように,近年の国際課税上のルールを概観したうえで,国際課税に関する実証研究を把握することにより,BEPSの効果や影響を検討する上で有益な示唆を提供することができた。 現在,わが国の法人税率は23.2%であり,それよりも低い法人税率の国に子会社等を有する場合には所得移転を行うことで税負担を削減することができるが,最低税率によるミニマム・タックスが導入されれば,多国籍企業が極端に法人税を削減することは困難になる可能性がある。今後は,国内法の改正によって,わが国多国籍企業がどのような税務行動を行ったのかについて実証的な検証を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度前半は,計画通り国内外の関連研究の整理を行ったが,実証研究をする際に使用するデータの購入が遅れたため,進捗状況はやや遅れている。現在,2023年6月から契約開始できるようデータの購入手続きを進めている。契約開始後,必要なデータをすべて取得し,整理,分析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,利用データベースの契約開始後,必要なデータをすべて取得し,整理,分析する。計量分析により,無形資産を利用した国際税務戦略が現在実施されているのかどうかを検証する。その後,研究会にて報告を行い,コメントを踏まえたうえで現行税制の改善案の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度に購入する予定であったデータベースの購入が遅れたため。現在,2023年6月から契約開始できるようデータベースの利用手続きを進めている。
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