2022 Fiscal Year Research-status Report
次世代型食料の普及過程における社会的受容性の検討:食肉代替食品を事例として
Project/Area Number |
22K13526
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤原 なつみ 九州大学, 基幹教育院, 助教 (50748184)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 次世代型食料 / 食肉代替食品 / 代替肉 / 培養肉 / 消費者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、食肉代替食品を事例として、次世代型食料の普及過程において想定される課題等を明らかにするとともに社会的受容性について検討を行い、持続可能な食消費の実現に向けた貢献の可能性について考察することである。令和4年度は、主に食肉代替食品に関する報道の状況や消費者の関心・意識などを明らかにするため、(1)新聞記事の計量テキスト分析、(2)生協組合員へのインタビュー調査、(3)消費者へのアンケート調査を行った。
(1)新聞記事の計量テキスト分析では、全国紙3紙を対象としてKH Coderを用いた分析を行った。食肉代替食品はいくつかの種類に分類され、同じ種類の食品であっても「大豆ミート」と「植物肉(Plant-based meat)」、「培養肉」と「クリーンミート」のようにさまざまな呼称が使用されているが、必ずしも明確に使い分けられているわけではない。そこで、それぞれの呼称がどのように使用されているのか、経年的な変化にも着目しながら新聞記事の分析を行った。調査結果については日本社会学会において報告した。 (2)生協組合員へのインタビュー調査では、組合員とその家族を対象としてフォーカス・グループ・インタビューを実施し、普段の食生活、大豆ミートや培養肉に対する考えなどについて質問した。その結果、食の関心が高い生協組合員の間でも食肉代替食品に対する関心や受容性が多様であることが明らかになった。 (3)消費者へのアンケート調査では、全国の18歳~69歳の成人男女1,700名を対象とした調査を実施した。「肉を食べる」という実践をどのようにとらえているか、食肉代替食品の呼称の違いによって受容性が異なるかといった点について調査を行い、調査結果については現在分析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度に予定していた調査のうち、国内外の政府機関や研究機関を対象としたインタビュー調査を次年度以降に延期した。延期の理由は、第一に新型コロナウイルス感染症の状況に配慮したため、第二に食肉代替食品をとりまく社会環境が予想以上に急速に変化したことから、インタビュー調査実施にあたっては十分に事前準備を行い、かつ実施のタイミングを慎重に判断すべきと考えたためである。一方で、今年度は令和5年度に予定していた消費者を対象としたインタビュー調査、アンケート調査を先に進めることができた。 研究をより円滑に進めるために研究計画の変更・見直しを行ったが、全体としては予定していた複数の調査を進めることができたことから、「(2)おおむね順調に進展している」と評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年2月に大豆ミート食品類のJAS規格が制定され、同年11月に米国食品医薬品局(FDA)が培養肉の安全性を認めるなど、食肉代替食品をめぐる状況は急速に変化している。令和5年度はこうした変化に留意して十分な準備を行ったうえで、適切なタイミングで研究機関や企業、関連産業の業界団体などへのインタビュー調査を実施したい。 並行して、令和4年度に実施したインタビュー調査とアンケート調査については、引き続き分析を進め、学会等での報告をめざす。
|
Causes of Carryover |
①新型コロナ感染状況への配慮、②研究を円滑に進めるための計画変更により、令和4年度に予定していた国内外の研究機関や企業を対象としたインタビュー調査を次年度以降に延期した。代わりに当初は令和5年度に予定していた市民を対象とした調査・分析を進め、報告を行ったが、調査や報告の一部をオンラインで実施したこと、一部については別の予算による充当が可能となったことから、支出は限定的であった。以上の点から次年度使用額が生じている。 今後の使用計画としては、もともと予定していたインタビュー調査を実施することに加え、食肉代替食品をとりまく社会環境の変化に関する調査の費用に使用する計画である。
|