2022 Fiscal Year Research-status Report
大規模社会調査データを活用した若年無業者の自殺に関する研究
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22K13535
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
平野 孝典 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (70803691)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 社会病理・逸脱 / 自殺 / 無職 / 公的統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍の自殺動向の特徴を把握するために、「人口動態職業・産業別統計」(厚生労働省)を活用し、2010年・2015年・2020年の職業別自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)を記述的に分析した。 2010年から2020年にかけて、男性の自殺死亡率(年齢調整)は低下傾向にあったが、女性の自殺死亡率(年齢調整)は2015年から2020年にかけて上昇していた。これらの傾向は、就業者と無職者にわけて自殺死亡率(年齢調整)を推定しても同様であった。就業者と無業者の自殺死亡率を比較すると、男女ともに無職者の自殺死亡率の方が大きかった。その格差の大きさを調べると、男性では2015年の格差がもっとも大きかったのに対し、女性では2010年から2020年にかけて格差の拡大傾向がみられた。 これに対して、若年層に限定すると、異なった傾向がみられた。男女ともに、2010年から2020年にかけて自殺死亡率は上昇しており、就業者と無職者にわけても同様であった。また、若年層においても無職者の方が就業者よりも自殺死亡率は高かった。女性では、無職者の自殺死亡率の上昇が顕著であり、25-29歳では2015年から2020年にかけて無職者の自殺死亡率は1.7倍上昇していた。同じく25-29歳の無職者と就業者の自殺死亡率の格差を調べると、男性では2010年の格差がもっとも大きかったのに対し、女性では2010年から2020年にかけて格差の拡大傾向がみられた。 以上のことから、さまざまな先行研究が指摘している通り、2020年のコロナ禍が自殺に与えた影響は性別・年齢・職業によって大きく異なっていたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は公的統計の調査票情報を活用した分析を進める予定だったが、利用手続き後にデータを確認したところ、変数名が脱落しているなど、分析を進めることが難しいことが判明した。そのため、改めて公的統計のオーダーメード集計を申請するなどしたため、研究の進捗にやや遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
「地域における自殺の基礎資料」(厚生労働省)とオーダーメード集計によって得た「労働力調査」(総務省)を活用し、コロナ禍の自殺動向を職業別に詳細に分析していく。この分析に目途が立ち次第、ウェブ調査の準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
当初計画に一部遅れが生じたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、2年目以降に実施予定のウェブ調査や公的統計のオーダーメード集計の申請等に活用していく。
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Research Products
(1 results)