2023 Fiscal Year Research-status Report
1980年代における非核都市宣言の地方的展開に関する研究
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22K13538
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Research Institution | Kyushu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
大和 裕美子 九州共立大学, 経済学部, 教授 (00779762)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非核自治体宣言 / 福岡県 / 市町村 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1980年代に日本の地方自治体において相次いだ、非核・核兵器廃絶の宣言、いわゆる「非核都市宣言」、「非核自治体宣言」と呼ばれる宣言採択の実態について考察することを目的としている。 これまで、福岡県遠賀郡岡垣町や北九州市の非核都市宣言が可決されるまでに展開された議論を追った。こうした一連の非核宣言採択の過程は、どのように位置づけられるだろうか。これらは宣言採択の一般的傾向なのか、あるいは特異な事例なのか。この問いに答えるためには、他の自治体の宣言採択の実態を明らかにする必要があるという考えのもと、2023年度は、福岡県内の市町村における全体的な傾向を概観したのち、主な資料として福岡県の自治体の会議録を参照しつつ、福岡県における宣言採択までの過程と議論の全体的傾向を明らかにすることを試みた。この作業は、これまで発表した北九州市および岡垣町の事例研究を拡張しつつ、宣言そのものをより広い文脈に位置づけることにつながると考えた。 福岡県の自治体の会議録を分析し、議会において宣言に至る過程を類型化した。被爆者の会や労働組合、改憲阻止、戦争反対といった各種団体による草の根運動からスタートし、署名収集、請願等の議会提出、議会での提起、可決というプロセスを経るという点で各自治体は大きく共通しているものの、宣言可決に要した時間は自治体によってさまざまであったこと、また基本的には、保守対革新という構図の中、党として自民党は反対する立場にあったものの、自民党の地方支部の中には、核廃絶は人類の悲願とし、積極的に宣言に賛成し、可決した自治体も存在していたことなど、単純化し難い様相を呈していたことがうかがえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各自治体の議会事務局の協力および福岡共同公文書館の協力により、資料の収集は概ねスムーズに進んだが、本会議以外の会議録を保存している自治体がきわめて少なく、論文の執筆は順調に進んだとは言い難い状況であった。多くの自治体が委員会付託とし、総務委員会で採択をめぐる議論を進めていた。しかし、総務委員会の会議録を保存している自治体はほとんどなかった。唯一保存していた自治体の会議録を入手したが、そのような議論が一般的なのか、特異な例だったかを見極めるのは困難であった。一応、論文の形にはまとめたものの、やはり論は不十分だった。加えて、ミクロな議論に焦点を当てたこともあり、マクロな視点、考察がきわめて不十分であった。結果、論文は研究ノートへの変更が提案されたため、2024年度に論文掲載を目指し、加筆修正することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は論文での採択をめざし、再投稿の準備を進める。指摘された点、とくにマクロな視点での考察を進める。2024年度の全国大会でマクロな視点を中心に考察した結果を発表し、コメントをもらう。また、すでに収集した本の再読、新たな関連文献、論文の収集を行う。その上で論文を修正し再投稿する。
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