2023 Fiscal Year Annual Research Report
Non-anthropocentric approach to resilience: Toward a new theoretical framework
Project/Area Number |
22K13551
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
栗原 亘 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (80801779)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レジリエンス / 脱・人間中心的アプローチ / ケア / エコロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度には、前年度に特定した2つの問題の乗り越えを目指す作業をおこなった。ここでいう問題の1つ目は、レジリエンスの概念およびそれに基づくアプローチが有する保守的な性格が、現在のエコロジー的な危機において本来採られるべきアプローチの採用を妨げたり、既存のさまざまな問題をそのまま温存してしまったりする傾向を生み出しうるというもの。そしてもう1つは、レジリエンス概念に基づく実践の多くは、望ましくない何かとの「闘争」を主軸とした、いわば力のポリティクスと呼べるような発想を暗黙のうちに採用してしまう傾向にあり、こうした発想が、多様な存在を可視化し、共生の在り方を模索するという、レジリエンス論が本来取り組むべき課題を見えにくくしてしまっているというものである。 以上をふまえ、脱・人間中心的アプローチ(NAA)の議論の中でも、特に「ケア」の発想を前面に押し出したフェミニスト科学論の立場などを参照しながら研究をおこなった。また同時に、NAAの観点からレジリエンスを考えるうえで不可欠な要素の1つである人工知能技術(AI)に着目した検討もおこなった。こうした作業の成果の一部は、早稲田社会学会大会シンポジウムにおける報告とそれを元にした論文の形で公刊した。 以上の成果を生み出す過程においては、名古屋大学大学院人文学研究科附属人文知共創センターの研究プロジェクト「人間・社会・自然の来歴と未来 :「人新世」における人間性の根本を問う」の研究集会に参加・報告し、意見交換もおこなった(報告スライドのデータはresearchmapで公開した)。 これらの作業を通して、今後展開すべき研究プロジェクトの方向性を示すこともできた。それはすなわち、闘争的なロジックではなく、ケアのロジックにもとづく、多様な「負担」の分有のための「ワークネット」に求められる新たな分業・分有理論の構築というプロジェクトである。
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