2023 Fiscal Year Annual Research Report
占領期大阪の新聞と「関西ジャーナリズム」の変容をめぐるメディア社会学的研究
Project/Area Number |
22K13555
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Research Institution | Osaka University of Arts Junior College |
Principal Investigator |
松尾 理也 大阪芸術大学短期大学部, その他部局, 教授 (80804799)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 占領期 / 新興紙 / 新聞史 / 関西ジャーナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
論文『占領期大阪の新興紙』で概観、整理した占領期関西の新聞界の状況を踏まえ、その中でものちのメディア状況に大きな影響を与えた事象として、戦後の新聞界の台風の目となった前田久吉(産経新聞の創業者)に着目。前田が大阪においてその新聞経営の核とした『大阪新聞』、およびその僚紙としての『産業経済新聞』『大阪時事新報』を中心に消長を精査することによって、占領期における大阪の新興紙、新聞界、ひいてはメディア全体の状況の再検討を行った。 具体的には、産経新聞新聞に連載した一連の記事『メディアの革命児・前田久吉』及びそれに続く単著『前田久吉、産経新聞と東京タワーをつくった大阪人』で前田の生涯をたどる中で、戦後ジャーナリズムにおいて「大阪的なるもの」がどのようにメディアの成り立ちや性格付けに影響していったかを検討。朝日・毎日の二大紙が牙城を築くなかで、ニッチに着目し、朝毎の締め付けが届かない場所をテコとして生き残りを図るという前田の方法論を明らかにするとともに、そのゲリラ的手法が東京へ進出した産経の特色でもあったと論じた。 さらに、論文『メディア史としての新聞社史の課題と可能性』、ワークショップ『社史の課題と可能性―新聞社史の変容を手がかりに』において、産経が「社史のない新聞」と揶揄される背景に、歴史意識の欠如や「今」へのこだわりがあると指摘。こうした特性が関西メディア全体とどう連関しているかの検討は次なる課題としたい。 また単著『橋本登美三郎の協同』では、戦前の大阪新聞界を支配した朝日新聞で編集局幹部を務めたのちの自民党幹事長、橋本登美三郎を取り上げ、戦後の新興紙のありかたを規定する大きな制約となった戦前朝日の圧倒的な資本力や編集力の持つ意味について考察した。
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