2022 Fiscal Year Research-status Report
健康寿命延伸のための食家事労働の構造的理解と食家事支援の方法論の確立
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22K13595
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
山本 咲子 お茶の水女子大学, ジェンダード・イノベーション研究所, 特任リサーチフェロー (60906973)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 家事労働 / 動作分析 / 食生活 / 高齢者 / 調理 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、健康寿命の延伸においては、単に食事をとることだけでなく、自分が食べたいものを自分で作れるということが重要であると考え、食家事労働に着目する。本研究の目的は、①高齢期特有の食家事動作における困難な問題は何か、②高齢期においても主体的な生活者であり続けるために必要な家事能力は何か、③高齢者が自らの健やかな食生活を維持できる支援のあり方とはいかなるものかを明らかにすることである。研究計画は、まず、調理実演調査を実施し、映像データを収集する。そして、映像データを用いてタイムラインアノテーション分析を行い、ジェンダーや年代による比較分析を行う。また、介護職員を対象とした、高齢者の食家事労働にかんするインタビュー調査を実施する。 今年度は、20代から80代の男女55名を対象とした調理実演調査を実施し、映像データを収集した。映像データを用いて、タイムラインアノテーション分析を行った。調理行動の中でも、Pausing(料理の手順が分からず止まっている状態)、Cutting(食材を切る動作)、Peering(食材の皮をむく動作)、Washing(食材や食器を洗う動作)、 Stirring(かき混ぜる動作)の5つの動作に着目して分析した。PausingとCuttingの分析を完了した。Pausingでは、男性は女性よりも、調理の次の手順がわからず止まっている時間が長かった。また、Cuttingについては、女性は男性よりも手際よく行えており、調理動作にジェンダー差が明らかになった。高齢者では、困難に感じる調理動作にジェンダー差があるという分析内容について、IFHE(国際家政学会)で口頭発表を行った。また、介護職員へのインタビュー調査は、6名のデータを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
映像データを収集するための調理実演調査を順調に進展させることができ、また、タイムラインアノテーション分析も順調に行っている。しかし、介護職員へのインタビュー調査については、コロナの影響で当初の計画より対象者数を集めることができておらず、来年度も継続してインタビュー対象者を募集する予定であるため、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
タイムラインアノテーション分析は、PausingとCuttingの世代間の比較分析を進める。また、Peering、Washing、 Stirringのジェンダー分析と世代間分析を進める。介護職員へのインタビュー調査は、今年度もデータ収集を継続し、インタビュー内容を文字データに変換し、質的分析を進める。これらの分析結果から、本研究目的を明らかにするために考察を深める。2023年8月に開催されるアジア地区家政学会で本研究内容を報告することが決定している。学会での報告に加え、研究成果の論文執筆を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、主に3点ある。第1に、国内学会に参加するための旅費を計上していたが、結果的に参加が叶わなかったからである。第2に、宿泊や旅費が必要な遠方の地域でのインタビュー調査を計画していたが、インタビュー調査の進捗が計画より遅れているからである。第3に、今年度は2本の論文執筆を計画していたが、1本にとどまり、英語校正料や投稿料の予算が残ったからである。 翌年度の計画としては、国内学会への参加や遠方でのインタビュー調査の旅費、論文の執筆に必要な英文校正料や投稿料などに予算を使用する。
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Research Products
(4 results)