2022 Fiscal Year Research-status Report
食品の水分勾配が食べやすさに及ぼす影響:ヒトの咀嚼性・嚥下性からの解明
Project/Area Number |
22K13598
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
江口 智美 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 講師 (20740244)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 水分勾配 / 食品物性 / テクスチャー / 咀嚼 / 嚥下 / 高齢者 / 筋電図 / うどん |
Outline of Annual Research Achievements |
生活の質(QOL)の維持・向上に役立つ高齢者用食品や、幼児の窒息防止など、安全で、栄養があり、おいしく、咀嚼・嚥下機能維持にも役立つ食品が求められている。水分量の多い食品が食べやすいことや、不均一な食品がおいしく感じられることは明らかにされているが、食品中の水分の不均一性である水分勾配が食べやすさや噛みごたえにどのように影響するかは十分に解明されていない。水分量の多い食品は、食べやすい一方で低栄養を招きうる。水分量を増やさなくても、水分勾配により食べやすさや噛みごたえが制御できれば、栄養が摂りやすく、おいしく、食べやすくかつ咀嚼・嚥下機能の維持にも役立つ安全な食品への応用展開が期待できる。 2022年度は、小麦粉を主材料としたうどんを用いて、水分量は同程度だが水分勾配が異なる試料の調製条件を決定した。水分勾配のパターンは、表面部の水分が多いもの(W)、全体の水分が均一化に近づくもの(E)、表面部の水分が少ないもの(D)を想定した。 試料の水分量、破断特性を測定し、高齢者および若年者における質問紙調査(歯の状態についてのアンケート、摂食可能食品アンケート)・ヒト試験(水飲みテスト、試料摂取時の咀嚼筋筋電位測定および官能評価)を行った。 水分量は、試料間に差異がないことを確認した。筋電位測定では、両世代で舌骨上筋群、咬筋ともに咀嚼時間、総筋活動時間、総筋活動量が、WおよびEよりDで有意に低値だった。これは破断歪および破断エネルギーがWよりDで有意に低値だった結果と一致した。咬筋の振幅は、若年者においてのみ、WよりEおよびDで有意に低値であり、破断歪と試料間の関係が一致した。 以上より、水分勾配が試料の物性や咀嚼・嚥下特性に影響を及ぼすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、試料調製条件の決定、破断測定を実施できた。また、2022~2024年度の実施を計画していた質問紙調査およびヒト試験も実施することができた。水分勾配の画像解析による評価は若干遅れているが、ヒト試験は当初計画よりも進んでおり、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、試料の五成分分析、水分勾配の画像解析を進める。また、物性およびヒト試験など、取得済データの詳細な解析を進める。
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