2023 Fiscal Year Research-status Report
20世紀初頭フランス女性の近代的女性観形成における東洋趣味モードの影響
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22K13622
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Research Institution | Morioka Junior College,Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
佐藤 恭子 岩手県立大学盛岡短期大学部, その他部局等, 准教授 (50634424)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フランス / フェミニズム / 女性運動 / フェミナ / サヴァリ / 針仕事 / パリ・モード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀初頭のモード、とりわけ東洋趣味モードとフランス女性の近代化の相関を明らかにしようとするものである。 今年度は、昨年度に引き続き、パリモードの立役者となった女性層が、フェミニズムの動きのなかでどのような位置づけにあったかを解明するため、モードを紹介する女性誌『フェミナ』に取り上げられた女性活動家ポーリーヌ・サヴァリを中心に調査した。昨年度見送ったフランスでの現地調査の実施が可能となったことにより、フランス国立図書館およびパリ市マルグリット・デュラン図書館にてサヴァリの活動に関する資料を収集することができた。サヴァリ主催による第1回婦人技術工芸国際博覧会については、当時のプログラムを閲覧し、博覧会の実態および開催に関与した交流関係について理解を深めることができた。サヴァリは、従来から女性に許されてきた仕事である芸術、針仕事(織物、レース、縫製など)における女性の能力の高さを評価し、女性ならではの仕事に価値を見いだし、労働組合の設立を目指した。同時代にこれらの女性的活動を否定することで男性との平等を求めたフェミニスト運動が盛んな一方で、伝統的な女性を養護する立場での活動も繰り広げられており、20世紀初頭の女性運動の複雑な側面がみられた。また、サヴァリのジャーナリストとしての活動には、チュニジア、モロッコに関する執筆があり、当時の女性の異国への眼差しを確認できた。サヴァリの活動については、日本女子大学総合研究所公開講演会にて「女性の地位と労働―フェミニズム運動における女優ポーリーヌ・サヴァリの貢献と活動の位置付け」と題した発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度予定していたフランス現地調査がコロナ禍の影響により実施できなかったため、パリモードの背景にある女性運動についての検討が不十分であった。しかし、今年度早々に絵現地調査が可能となり、成果を一部口頭発表として報告することができた。一方で、今年度計画していた女性の異国文化の受容の様子およびモードとの関係についての精査はまだ十分とは言えない。明らかになった一部研究成果を論文投稿のため執筆を進めているが、発表に至っていないことから、当初計画よりやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の影響により渡航計画にずれが生じたため、2024年度もフランスにおける現地調査を行う。調査では、特に女性誌に掲載された異国に関する記事内容について掘り下げ、同時代の男性とは異なる女性による異国への眼差しの様相を明らかにしたい。 また、本研究を進める中で、従来から女性に許されてきた仕事である織物、レース、縫製などの針仕事に対してフェミニズム運動を背景に女性間の評価の違いが浮き彫りになった。モードを支える女性像の実態を明らかにするうえで、女性の針仕事の位置づけの変容についても考察を進めたい。 前年度の調査結果も含めた研究成果は、学会発表および論文にて発表する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により渡航計画に1年のずれが生じてしまったが、研究計画の内容については当初の予定通り行うため、実施期間をずらして今年度もフランスでの現地調査を実施する。計画のずれにより、研究成果の発表が遅れているため、今年度は学会発表および論文発表を行う。
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