2023 Fiscal Year Research-status Report
フランス人格主義を基点とした「人格の完成」の再検討ー道徳教育との関連もふまえてー
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22K13640
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
寺川 直樹 大谷大学, 教育学部, 講師 (50801990)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 人格 / 自由 / 行為 / 人間形成 / ムーニエ / 人格主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ムーニエの人格主義思想を人間形成の視点から吟味した。わけても、晩年の書『人格主義』に着目し、同書のキーワードである人格・自由・行為の関係に焦点を当てて検討を進めた。 まず、人格の特徴として、人格は自然との連続性を保持しつつもそこから超越しようとする点を指摘した。また、こうした超越的方向性の裏面として、人間は自らの内面世界へと目を転じることになる。とはいえ、こうした内面化の過程が進展すると、翻って自己からも解放され、他者へと開かれていく。 こうした超越(解放)的運動こそ、ムーニエが語る自由の一端である。とはいえ、人間の自由は神的な絶対的自由ではなく、今ここに存在する実存の自由であることから、「条件つきの自由」と称するのが適切であろう。その意味で、彼は自由を「選択の自由」と捉える。しかし、それもまた単に所与の選択肢を選ぶという通俗的な意味ではなく、「創造的な決断」としてそこに積極的意義を付与するのである。 このように、ムーニエにとって自由とは、まさに選択や創造、決断、さらには超越(解放)であることから、それは行為という性格を有することになる。そして、この行為という概念により実存的な意味合いを込めて、彼はそれを(現実世界への)参加と表現する。また、選択や決断とも関連して、参加としての行為は現実世界との「対決」やそれへの「抗議」という性格も有することも併せて確認した。 以上のように、ムーニエの人格主義思想において、人格・自由・行為は密接に連関する。そして、こうした超越(解放)・選択・創造・決断といった自由としての行為こそ、人間形成を支え、またそれ自体が人間形成の過程だと言えよう。こうした観点をもとに、ムーニエが人格の教育を構想していることを指摘するに至った。さらに、前年度の研究課題であったベルジャーエフの自由概念との比較考量も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究課題は、ムーニエの自由概念を教育学(人間形成論)の視点から考察することであった。今年度はその点について検討し、その成果を論文として公表することができた。また、2022年度の研究課題であったベルジャーエフの自由概念と比較考量するにまで至った。以上のように、当初計画に即して研究課題を遂行していることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、道徳の内容項目の4視点の一つである「B 主として人との関わりに関すること」を念頭に、ムーニエの人格主義に依拠しながら他者論について検討する。その際、今年度参照した『人格主義』だけでなく『実存主義案内』にも目を配りながら、その具体的内実を明らかにするとともに、その人間形成論(教育学)的意義を明らかにしている。
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Research Products
(1 results)