2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13679
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
阿久津 美紀 目白大学, 人間学部, 助教 (50823449)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 記録管理 / アーカイブズ / 個人情報保護 / 特別養子縁組 / 国際養子縁組 / 社会的養育 / ケースファイル / 情報開示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、養子縁組に係る当事者(養子、生みの親、養親)の記録への継続的なアクセスを保障する記録管理体制の整備に向けた実態の把握と具体策の策定を目的とする。研究課題の1年目である今年度は、養子縁組に関する記録へのアクセスを保障するために、現在記録を作成、保存する自治体や民間のあっせん団体が抱える課題と今後の支援体制を検討した。既に養子縁組に関する記録管理を行う上で課題として明らかになっているのは、①記録の保存年限の不統一、②閉鎖団体の記録の保管、③個人情報の開示・公開についての理解不足である。これらの課題についても、国内外の自治体で聞き取り調査とともに、養子縁組関係資料の収集を行った。国内の調査対象は、戦後に国際養子縁組が多く行われていた神奈川県、広島県、沖縄県とした。また、調査の過程で、戦後海外養子に出された子どもの記録についての所在調査を実施したが、少なくとも数百名の日本から海外への養子に関する記録は散逸したことが明らかになった。このような記録の散逸を防ぎ、養子縁組に関する記録の管理や提供をどのように行うべきか検討するために、日本国際社会事業団の協力を得て、ケースファイルのデジタル化プロジェクトを今年度より開始した。今年度については、ケースファイルの安定した記録の管理をすすめるためにアメリカ、イギリス、オーストラリアなどの児童福祉に関する行政機関が実施しているレコードスケジュールを検討するとともに、どのような方法でデジタル化したケース記録を長期的に安全な方法で保管していけるのかを検討し、デジタル化作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に計画していた養子縁組に関する自治体の調査は問題なく実施することができた。しかしながら、個人情報が含まれる記録ということもあり、一部の記録は、申請した記録がすぐに公開されるのではなく、個人情報へのマスキング(黒塗り)の処置が必要なところもあり、公開を待っている記録もある。公開された黒塗りされた記録からは、養子縁組の過程について明らかになる情報もあり、これらはこの研究課題の今後の発展につなげていくことができるものである。また、イギリスにおける養子縁組記録の管理と開示について、先行研究や現状を整理し、共有することは、今後の日本の記録管理にも影響を及ぼすことが考えられるため、研究協力者と共著で日本子ども虐待防止学会の学会誌に「養子縁組の記録保管と開示から考える「子どもの知る権利」の保障」(『子どもの虐待とネグレクト』vol.24(1))として成果を公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については、研究計画の2年目のため、日本での調査結果をまとめつつ、韓国やイギリス、オーストラリア、アメリカなど養子縁組の当事者の活動が活発に行われている国の記録管理や開示に関する調査を実施する。具体的には、自治体や民間団体が養子縁組の当事者に対して、どの様な法律や規程の中で記録の開示を実施しているのか、また、その中での課題についても分析できればと考えている。先行研究などの調査から、国の支援などを得て、デジタル化を行う民間団体や記録の一部を国立公文書館や大学のアーカイブズに委託しているところも出てきている。こうした現代のニーズにあった管理方法についても調査を実施していきたい。また、それらの調査の過程で得た知見や実態の報告などについて、児童福祉に関する現場で働く職員にも還元できるようにしていく。
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Causes of Carryover |
調査のために使用するPCを想定よりも安い価格で購入することができたことと、記録のデジタル化に伴う電子媒体の記録管理の長期保存や管理の専門家との研究会の企画など、登壇者の予定により、次年度以降に計画することとなったため、今年度から予算を繰り越すことになった。
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Research Products
(4 results)