2023 Fiscal Year Research-status Report
多様性を活かした市民性教育ができる教師の育成方略:定時制高校教師のTEAを通して
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22K13690
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
石川 照子 三重大学, 教育学部, 教授 (00908543)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 市民性教育 / 多様性 / 定時制高校 / 教師教育 / TEA / TEM図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多様性を活かした市民性教育を実践する教師の変容過程の共通性と相違性の解明を通して,多様性の視点を持つ教師を育成するための方略の提案を行う。令和5年度は以下のことをおこなった。 ①研究対象とする定時制高校の役割及び在籍生徒の歴史的な変容についての文献調査に加え,定時制訪問し,授業観察及び教員への聞き取りを行った。その結果,定時制高校では,在籍生徒の多様性に加え,平成30年度から制度化された通級による指導を受ける生徒の増加や,かつてのような逸脱傾向のある生徒は減少し,おとなしく真面目な生徒が増加する傾向が確認できた。 ②TEA(複線経路・等至性アプローチ)の研究方法についての文献調査で様々な表現のTEM図の存在を確認できた。また,TEAに関する研究会等に参加し,研究分野が異なる研究者とさまざまなTEM図を使った研究について情報交換をおこなうことで,作図についての示唆を得ることができた。 ③歴史的構造的ご招待の手法を採用して選定した研究協力者への半構造化インタビューデータをもとに作成したTEM図を精緻化し,うち1名については修正作業を協働で行った。修正作業を協働で行うことで,省察を深めることが可能になった。 ④この1名について,TEM図を使った教師の変容過程の分析結果をまとめ,社会系教科教育学会第35回研究発表大会において発表した(オンライン掲載型,2024年2月17日~3月15日)。本発表では,TEM 図による分析の結果,「 定時制高校勤務 」を必須通過点とし, 「多様な生徒の実態を活かして授業を工夫する」を等至点としたところ,「生徒の様子 に 衝撃を受ける」と「期待する生徒像を持つ」が分岐点になっているこ とがわかった。 さらに,定時制高校から全日制高校への異動後に,「異動した高校の生徒の 実態を活かした授業を工夫する」というセカンド等至点を生成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3名の研究協力者のインタビューをもとにTEM図の精緻化を図ったが,想定以上に時間がかかってしまい,1名を除き協働での図の修正作業が完了していない。そのため,3者の比較分析に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力者とのTEM図の協働修正作業を行い,そこから導出された多様性を活かした市民性教育を実践する教師の共通点と相違点を明らかにし,その成果の一部を論文投稿(『社会系教科教育学論叢』を予定)するとともに,年度内に学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
作成したTEM図について,研究協力者との対面での協働の修正作業を予定していたが,全員の研究協力者を訪問しての修正作業に至らなかったこと,また社会系教科教育学会(兵庫教育大学)での自由研究発表が急遽,オンライン掲載型に変更になったことから,予定していた旅費に未使用額が生じた。生じた未使用額については,次年度の研究協力者の再訪,学会発表等の旅費に宛てる。
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