2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13720
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Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 直飛 旭川工業高等専門学校, 電気情報工学科, 助教 (70907120)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 数理・データサイエンス / 多変量解析 / 数学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
多変量解析とは,多面的な特徴を備えているデータを分析するための統計手法の総称であり,データサイエンス・AI技術において主要な役割を果たしている。しかしながら,我が国の統計教育では,伝統的に記述統計や推測統計に焦点が当てられており,多変量データに関する教育基盤は十分に整備されているとは言い難い。 本研究は,多変量解析に関する数学の指導内容を研究することにより,数理・データサイエンス教育の高大接続的な系統的指導内容を構築し,数理・データサイエンス教育の強化に貢献することを目的としている。具体的には,多変量解析の基礎的な数理的知識間の相互関係に着目して分析を進めることにより,「多変量解析に関する基礎数理の整理」に取り組んできた。多変量データの扱いや回帰分析,主成分分析,クラスター分析といった諸手法についてベクトルや行列といった線形代数に関する数学的基礎知識を高大接続的な観点から整理・分析を行い,現在のカリキュラムの問題点を明らかにした。高等学校におけるベクトル指導では,有向線分ベクトルという幾何的な対象としてベクトルが取り扱われることが一般的であるが,このようなベクトルの取り扱いは教育的配慮を行っていると言える一方で,ベクトルの有用性を図形や力学の問題に限定してしまう可能性が高い。さらには,ベクトルの成分と座標の概念の混同の問題があることを分析した。本研究では,これらの問題を解消し,多変量解析への導入を見据えたベクトルの指導方法を提案し,さらにデータの分析への展開について研究を行うことにより,数理・データサイエンス教育へ向けたベクトル教育の基盤構築に貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,「多変量解析に関する基礎数理の系統的指導内容の構築」に関する理論的検討および「多変量解析に関する教育実践研究」に関する実践的検討の両面から,多変量解析の基礎数理の系統的指導内容の構築の研究を行ってきた。 現在までの進捗として,多変量解析の基礎数理としてベクトルに着目し,文献調査や実践的検討をもとに多変量解析へ向けた基礎数理の系統的指導内容の分析を行った。多変量解析は,データサイエンス・AI技術において主要な役割を果たしているが,従来の統計教育においては,記述統計や推測統計に焦点が当てられてきた。確かにこれらは統計学やデータサイエンスの柱とも言うべき内容であるが,機械学習やAI技術において主要な役割を果たしているのは多変量データの文的手法を提供する多変量解析である。しかしながら,高等学校の学習指導要領ではベクトルや行列に関する学習内容が軽視されてしまっている現状の分析を行った。本研究では,そのような現状を踏まえた上で,従来のベクトルの指導内容の問題点を整理するとともに,多変量解析へ向けたベクトルの指導内容の分析を行うことにより,ベクトルに関する高大接続的な指導内容の分析を行い,数理・データサイエンス教育の基盤を構築に貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,高大接続的な観点から多変量解析の基礎的な数理的知識間の関係に着目して分析を進めることにより,「多変量解析に関する基礎数理の整理」に取り組む。これまでの研究では,多変量解析とベクトルの関係に着目し,現在の高等学校におけるベクトルの取り扱いの問題点の整理,および多変量データを表現するベクトルの導入と多変量解析の基礎事項であるデータの分析との関連に関する指導内容の研究を行ってきた。そこで今後は,これまでの研究成果を基盤とし,多変量解析の具体的手法である回帰分析,主成分分析,クラスター分析といった諸手法に関する数学的基礎知識の整理・分析をもとに,高大接続的な系統的指導内容の構築に取り組んでいく。具体的な手法においては,ベクトルや行列といった線形代数に係る内容だけでなく,微分積分等の基礎知識との関連についての分析も必要であると見込んでいる。また,研究を推進させていくために,学会等での情報収集やデータサイエンス教育の専門家と議論を行っていくことで研究を発展させていく。得られた研究成果は,学会等で発表することにより,数理・データサイエンス教育の知見蓄積に貢献していく。
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Causes of Carryover |
出版予定の文献を年度内に入手することができなかったため、次年度使用額が生じてしまった。次年度使用額に関しては、当該文献の費用として使用する計画である。
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