2023 Fiscal Year Research-status Report
言語性学習障害の障害予防を目的とする言語指導プログラム・保育者研修システムの開発
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22K13742
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Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
大島 光代 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 教授 (00639164)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 特殊音節 / 拗音・拗長音 / 読みの促進 / 木育・遊び / 保護者(親)の意識 / 読み困難 / 音韻障害 / ワーキングメモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、科研費を使用していない。昨年度開発した教材(発達性読み書き障害児及び軽度知的障害児等「読み書き」に苦手さを感じる幼児児童向けの歌いながら特殊音節の読みを獲得する教材)を聴覚障害児(軽度の知的障害を伴う)を対象に実践し、成果を確認した。聴覚障害児は、聾学校幼稚部在籍時より発音練習を行う際に文字を手掛かりにしながら構音要領を獲得したり、発音誘導に文字を提示し視覚的な補助教材として文字をよく目にしたりしている。そのため、歌に拗音・拗長音を組み込み、クイズ形式で提示された文字を読む「遊び教材」は、小学部特別支援学級在籍の児童にはマッチしていた。教材活用によって、拗音・拗長音の読みは、「全く読めない」から「全て読める」状態に改善した。 また、発達性読み書き障害の「読めない」困難性は、音韻障害に加えて読みの自動化を司る脳機能の問題、さらにワーキングメモリの問題が関与しているという知見(日本LD学会2023)を得た。ワーキングメモリの力を育む教材開発を目指した取組を行うため、幼児期(特に幼小接続期にあたる年長児期)に注目した。非認知能力の一つである自己肯定感や自己有能感を育むことで、認知能力の一つであるワーキングメモリの力が向上するという仮説のもと、「木育・遊び」プログラムの開発準備を行った。 「木育・遊び」プログラムは、自然環境の中で、木の枝などの木材を加工し遊び道具として活用しながら、家族と一緒に木育をベースとする遊びをつくるプログラムである。身近な家族が子どもの取組の様子から「集中する力」「目的を達成するまでやり抜く力」を認めることによって、保護者(親)の子どもへの意識変容と子ども自身の自己認識の変容を目指す。このプログラムの構築及び成果の確認によって、幼児教育施設で実践可能な「木育・遊び」保育を提案したい。フィールドは、瀬戸市「海上の森」センターを活用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
私的な事情(家庭の事情・両親の介護)により、研究に費やす時間が制限される状況が続き、自分なりに努力はしているものの、十分に進めることができたとは言えない状態である。 言語指導プログラム及び教材の開発については、昨年度開発した教材の活用・有効性の確認を実施。さらに、ワーキングメモリが「読み」の力に関連していることに注目し、ワーキングメモリの力を育む教材や遊び等の開発に向けての研究をすすめている。 保育者向けの研修システムの構築に関しては、日本LD学会の自主シンポジウムで発信した際に、H県のある市教育委員の方から、研修の問い合わせがあった(2023年11月)。研修の具体的な内容等をまとめたが、予算がつかず実施には至っていない。 教材開発と検証をすすめながら、今後は、保育者向け研修システムの具体的な内容に教材使用を組み込む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、「木育・遊び」プログラムの開発を目指す実践計画を既に作成し、系列の幼稚園で対象となる家族10組を募集する段取りを整えた。この実践研究によって、ワーキングメモリの力を育む教材や遊びを明らかにすること、また家族のかかわりや家族(特に親)の意識が自己肯定感などの非認知能力の育成に影響すること、ワーキングメモリと自己肯定感との相関性などを追及したいと考える。 音韻障害の前駆症状を明らかにするための実態調査は、今年度取り組む予定である。 さらに、言語指導プログラムの改編についても取り組んでいく。このプログラムの教材運用については、少しでも今年度内(春季休業中)実施できればと考えている。
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Causes of Carryover |
私的な事情(両親の介護)により、研究時間が大幅に削減された結果、次年度使用額が生じた。教材(昨年度開発)を今年度試用し、その有効性を確認する実践や、次年度の実践のいための準備・新たな教材開発の構想などの研究活動に終始し、研究費を活用することがなかった。 次年度は、今年度活用する予定であった「言語指導プログラム」開発と、発達性読み書き障害の要因として新たに注目を集めている「ワーキングメモリ」を育む遊び・活動・教材の開発に使用したい。ワーキングメモリは一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会が提供しているワーキングメモリの検査「HUCRoW(フクロウ)」を活用する予定である。検査費用は一人5500円必要で、検査対象は20人~30人を予定している。個別検査のため、検査者の人権費も含め60万円ほどかかると考えている。
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