2022 Fiscal Year Research-status Report
リスクの大小判断能力を培う小学校段階における確率教育プログラムの開発と実践
Project/Area Number |
22K13780
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
口分田 政史 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (50806635)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 確率 / 期待値 / リスク / 認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代社会はリスクに取り囲まれており「リスク社会」と呼称される。過剰なまでの安全への追求が社会的な混乱につながることもあり,リスクに対処する知識や能力を身に付けることはこれまで以上に市民に求められている。リスクを正しく恐れ,適切に対処していくためには,確率概念を用いてリスクを定量的に捉える視点は欠かせない。しかし小学校段階のカリキュラムでは確率概念に明示的な焦点が当てられておらず,今日の社会状況に対応しきれていないことが問題視されている。小学生も多くのリスクに直面している現状を踏まえれば,リスクに対処する知識や能力を身に付ける必要がある。そこで本研究では,小学校段階におけるリスクの大小判断能力を培う確率教育プログラム開発を目的とする。研究の方法は,まず小学生が持ち合わせているリスク判断の特徴を解明する。次に調査結果を踏まえ,学習者の認知に見合った教育プログラムを提案する。さらに教育実践を通してその妥当性を検証する。 令和4年度は,基礎的なリスクの定義の一つであるNational Research Council(1989)による「被害の生起確率と被害の影響の大きさの積」に着目し,国内の児童を対象に実施した期待値(リスク)判断に関わる認識調査を分析した。その結果,小学校第1学年の段階で59.1%の児童が,誤判断は含まれるものの,確率と確率変数値(影響の大きさ)の2変数を考慮した判断を行なっていることなどが示された。また確率概念と関連する数学概念に対する児童の認知的特徴を認識調査より明らかにした。これらの一部は,「小学校段階における学習者の期待値判断の学年横断的調査研究 」,数学教育学会誌 63(1,2),29-43などで明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は,期待値判断に関わる調査結果を分析し,教育プログラム開発への示唆を得た。このように概ね当初の計画通り進んでいることから,上記の自己点検による評価区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,調査研究において課題として示された確率や期待値(リスク)の誤概念に対して,追調査を実施し,誤概念を修正する教授方略を明らかにする。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会が,オンライン開催となったため,次年度使用額が生じた。使用計画は,研究成果の公表に向けた論文作成に関わる費用に充填する予定である。
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