2022 Fiscal Year Research-status Report
効果的利他主義の心理的・社会的基盤-評判に基づく検討-
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22K13794
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
河村 悠太 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 准教授 (40897071)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 利他行動 / 向社会的行動 / 効果的利他主義 / 評判 |
Outline of Annual Research Achievements |
利他行動は,行為者が何らかの自己犠牲を払って,他者に利益を与える行動と定義される。これまでの研究では,他者から与えられる評判が,より多くの自己犠牲を払って他者利益を与えるという形で利他行動を促すこと,およびそうしたより利他的な振舞いに対して良い評判が与えられることが示されてきた。これらの知見は,現実場面で効率的に利他行動を促す方法を考えるうえで有用であると考えられる。ただし,これまでの研究では,他者から与えられる評判が利他行動の質を促すのか,そしてより質の高い利他行動に対して良い評判が与えられるのかは明らかではなかった。 そこで本年度は,質の高い利他行動が良い評判につながる要因として機能するのかを調べることを目的として,先行研究の場面設定を援用した予備的実験を行った。先行研究に倣って,援助者の支払った自己犠牲が一定にもかかわらず相手に与えた利益が多いほど質が高いとみなし,他者がそのような行動を取った,あるいは取らなかったという場面に関するシナリオを参加者に示した。そのうえで,行動を取った人物がどの程度良い人物だと思うかについて,いくつかの質問を行った。回答結果をまとめたところ,質の高い利他行動が良い評判につながるという結果は見られなかった。ただし限定的な場面設定であったこと,質の良さを一面的に定義していたこと等,限界点が多くあり,予備的な実験をもとに,これらの点を改良した検討を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は当初の計画にあった研究1の予備的な実験を行った。データ収集およびその分析は順調に進んでいる。ただし一方で,実験の結果として十分な結論に至ることはできておらず,学会発表や論文執筆には至っていない点が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
評判と効果的な利他行動の関連をさらに詳細に検討することを目的として,本年度行った実験の手続きを改良する形で,引き続きオンライン実験を実施する予定である。具体的には,より場面を増やす,質問項目を変更する,利他行動の質を様々な形で定義して測定する,等の変更を行うことを検討している。また,同様の実験を対面でも行うことができるか検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは,新型コロナウイルスの影響等でもともと予定していたよりも旅費の支出が少なかったことが主な理由である。分析用ソフトや消耗品の購入,追加実験費用等に充てる予定である。
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