2023 Fiscal Year Research-status Report
社会環境が親密他者に対する心理に与える影響の検討:生物学的メカニズムの解明
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22K13798
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
山田 順子 立正大学, 心理学部, 助教 (20837124)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 恋愛関係 / オキシトシン / メチル化 / 社会環境 / 関係流動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会環境における関係流動性が、オキシトシン機構に影響を与えることを通じて、恋愛関係におけるパートナーへの心理的結びつきの強さに影響を与えるとの仮説を立てる。令和5年度は、頬粘膜細胞から抽出したDNAサンプルを用いてメチル化解析を実施した。令和5年度では、オキシトシン受容体遺伝子に加え、先行研究 (e.g., Acevedo et al., 2020) で恋愛関係との関連が指摘されているバソプレシン受容体遺伝子やドーパミン受容体遺伝子との関連についても合わせて検討した。 分析の結果、オキシトシン受容体遺伝子の11番目のCpGサイトのメチル化と関係流動性の間に負の関連が見られた。当該領域は遺伝子の転写効率に影響を与えることから、社会環境における関係流動性が低いほど、オキシトシン受容体遺伝子のメチル化が促進されることが示唆された。またバソプレシン受容体遺伝子の平均的メチル化は、女性においてのみ関係流動性と負の関連を示した。一方で、関係流動性と恋愛関係関連指標との関連については、関係流動性と過去の交際経験の間にのみ正相関が示され、先行研究で示されたような情熱や親密性との関連は見出されなかった。バソプレシン受容体遺伝子の平均的メチル化は婚姻状況と正相関し、特に既婚女性の方がバソプレシン受容体遺伝子の平均的なメチル化傾向が高いことが示された。またドーパミン受容体遺伝子の平均的メチル化は離婚歴と正相関し、特に男性において離婚歴があるほどドーパミン受容体遺伝子の平均的メチル化が高い傾向が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、DNAメチル化解析を用いることで、社会環境とオキシトシン機構との関連をより詳細に検討することができた。本年度は、関係流動性がオキシトシン受容体遺伝子を含む複数の受容体遺伝子のメチル化と関連することが示された。また、関係流動性や各受容体遺伝子のメチル化と婚姻状況や離婚歴、過去の交際人数の間に関連が見られたことから、社会環境と各受容体遺伝子のメチル化、および恋愛関係におけるパートナーとの関係形成の良好さが関連することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度では、本研究の中心的な問いである社会環境とオキシトシン機構との関連について、DNAメチル化解析を用いることでより詳細に検討することができた。特に、関係流動性がオキシトシン受容体遺伝子等のメチル化と関連することが示されたことで、社会環境が主観レベルではなく生物学なレベルで対人心理に影響を与える可能性が示唆されたことは、本研究の仮説を支持する結果である。 一方で、恋愛関係における情熱や親密性については先行研究の結果が再現されないという問題も生じた。関係流動性やオキシトシン遺伝子受容体遺伝子等のメチル化との関連が見られた、婚姻状況や離婚歴、過去の交際人数といった客観指標に比べ、恋人への情熱や親密性は調査票による自己報告を用いたことから、最終年度では主観報告によらない客観指標を用いた検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和5年度は、当初計画していた行動実験ではなく、過去に採取した頬粘膜細胞を用いたメチル化解析と質問紙調査を実施した。また研究計画の変更に伴い、当初予定していた海外学会での研究発表は行わないこととなった。このため、実験参加者への謝礼および海外学会での渡航費用を最終年度に繰り越すこととなった。
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