2022 Fiscal Year Research-status Report
霊長類の協力行動におけるミームの探求:ベニガオザルの連合形成をモデルとして
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22K13802
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
豊田 有 中部大学, 創発学術院, 日本学術振興会特別研究員 (30838165)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 協力行動 / 社会構造 / 血縁度 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、博士課程より世界に先駆けて研究を進めてきたベニガオザルにおいて、この非血縁個体間の協力行動に該当する「オス間の連合形成」を発見した。そして、こうした協力行動が促される理由として、遺伝的血縁関係になくても社会生活を営む上で構築される「顔見知り」関係が、繁殖機会をめぐる強い競合条件下において連合形成として顕在化するのではないかと予測し、研究をおこなっている。本研究は、交尾以外の文脈でのオス間の個体間関係や、群れ移籍の履歴、出自群の相違など、非血縁個体間で協力行動を促進する要因を明らかにすることを目的としている。 当該年度では、交尾以外の文脈でのオス間の個体間関係に着目し他分析を実施し成果をあげた。調査地のベニガオザルでは、森の中を一列になって移動する習性がある。そこで、林内にカメラトラップを設置して通過する隊列の様子を記録し、個体識別をしながらすべての個体の通過順序を記録し、その順序の解析から、群れの社会構造を再構築することに成功した。一連の成果は国際専門誌PRIMATESに発表した。 また、コロナ禍の渡航規制による約二年半の研究中断を経て10月に野外調査を再開させ、現地の個体情報の整理や行動データの収集などを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は年度初旬からの渡航再開を予定していたが、渡航規制緩和がずれ込んだこともあり、調査開始時期が若干後ろにずれ込んだ。だが、その分国内で実施可能な分析が早く進み、カメラトラップを用いた隊列順序の解析から社会構造を可視化する研究は論文化まで予定より早くすすめることができた。研究自体は現状、順調に進捗していると言ってよい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は長期調査によってオスの移籍記録の蓄積に務める。また、遺伝解析の準備も進め、タイ国内のカウンターパートや集団遺伝の専門からと共同で解析を進めていく予定である。特に、調査地に生息する各群れに遺伝的特徴(例えばマイクロサテライトDNAの多様性など)を見出すことができるか否かが、オスの出身群特定の鍵となるので、積極的に推進していく。
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Causes of Carryover |
海外渡航の開始時期が予定より遅れたことにより、当初予定していたDNAの実験を開始できなかったため、本予算を利用しなかった。 次年度以降は、調査に関する旅費や実験経費として支出を予定している。
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Research Products
(5 results)