2023 Fiscal Year Research-status Report
方略的知識の獲得が実行機能に及ぼす役割とその発達過程
Project/Area Number |
22K13811
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
柳岡 開地 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (00938376)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 実行機能 / 方略的知識 / 文脈情報 / 児童 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「経験に伴い獲得された知識が実行機能の個人内の変容を支える」という可能性を検証することを目的とする。具体的には、「目標に向けて自らの思考と行動をどのように制御するのか」という方略的知識が学習されることに焦点をあて、 初年度では方略的知識の転移は異なる課題間では起こりにくいことを明らかにした。具体的には、成人が特定の実行機能課題 (例: AX-CPT課題)を繰り返し実施した直後に、同じ認知制御方略が用いられている想定されている異なる実行機能課題 (例: 手がかり切り替え課題) への転移は見られなかった。 今年度は、いかなる条件のもと、課題「間」の方略的知識の転移が見られるのかを検討した。その結果、課題目標に関わらない文脈情報を一致させることが効果的であることをが示唆された。具体的には、課題全体のカバーストーリーと刺激が提示される背景の色情報などの意味的・知覚的な文脈情報を一致させるとと課題「間」の方略的知識の転移が見られた。実行機能の訓練に伴う転移効果を左右する要因として、多くの研究が課題目標に関連する要素に着目してきた。しかし、本研究の成果はむしろ課題に関連しない文脈情報が重要であることを示唆している。こうした知見は、実行機能がいかに形成されていくのかを知識や文脈という観点から見直すことうえで貴重な知見となり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は他にも大きな進展があった。まず、本プロジェクトに密接に関連する2つの研究が国際誌に採択されたことである。1つは、成人と児童を対象に、認知制御の方略的知識の転移をはじめて示した研究がCognition誌に掲載された。また、そうした方略的知識の転移の程度は、様々な刺激を経験することでより増大される可能性があることを明らかにした研究がQuarterly Journal of Experimental Psychology誌に掲載された。どちらの研究も当該分野では非常に新しく、学術的価値の高い知見を提供していることから、国際的にも評価の高い学術誌に掲載されている。 また、本プロジェクトで得られた成果の一部を日本心理学会で口頭発表し、多くのフィードバックを得ることができた。以上より、本プロジェクトの2年目は、本プロジェクトで掲げられていた多くの目標を達成する年度となった。次年度では、本プロジェクトの発展に向けてより一層研究活動に邁進したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られたを追試し、国際学術誌へと投稿予定である。さらに、どのような文脈情報を一致させることが重要であるのか検討を深めていく。また、本プロジェクトをさらに拡張していくために、更なる研究費の獲得を目指す。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り執行したものの、約17000円ほど残る形となった。様々な使い道が考えられたものの、本プロジェクトにおいては1つでも多く実験と調査を進めることがプロジェクト全体を進める近道となる。そのため、次年度の調査に使用するために残す形とした。
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