2023 Fiscal Year Research-status Report
LGBのポジティブな体験に焦点を当てたウェルビーイング療法の実践
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22K13828
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Research Institution | Saitama Gakuen University |
Principal Investigator |
佐藤 洋輔 埼玉学園大学, 人間学部, 講師 (50836864)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | LGB / 経験抽出法 / セイバリング / LGBアイデンティティ / ウェルビーイング療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
LGBに対して有効なポジティブ心理学的アプローチについて,ウェルビーイング療法の観点から検討するため,2023年度は以下の研究を実施した。ウェルビーイング療法実践の前段階として,性的指向と関連したポジティブな出来事とウェルビーイングの関連について,ポジティブな体験に対して意識的に喜びや感謝を感じようとする行動や態度であるセイバリング(savoring)を媒介変数として,経験抽出法による調査を行った。研究参加者はLGBに該当する当事者11名であり,10~14日間の調査期間において,過去24時間に体験した性的指向と関連したポジティブな出来事やその出来事に対するセイバリング,その日一日の幸福感を日誌法形式で尋ねた。また,調査の事前・事後において,日常的にセイバリングを行なう傾向や,LGBとしてのアイデンティティに対する感情や態度などについても同時に尋ね,瞬間瞬間のポジティブな体験やセイバリングにおよぼす影響を合わせて検討した。分析の結果,性的指向と関連したポジティブな出来事は,性的指向とは関連しないポジティブな出来事の影響を統制した場合でも,セイバリングを介して日々の幸福感を高めることが示された。また,性的指向と関連したポジティブな出来事とセイバリングの関連は,日常的にセイバリングを行なう傾向の高低や,LGBとしてのアイデンティティを構成するいくつかの次元によって調整されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査会社の保有するリサーチパネルを利用し,web上で調査参加が可能なシステムを活用したことで,LGB当事者のリクルートに関する課題を解決することが可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度においては,2023年度に実施した経験抽出法調査について引き続き調査参加者の追加を行ないつつ,性的指向と関連したポジティブな出来事に焦点を当てたウェルビーイング療法の効果について検討を行なう予定である。ウェルビーイング療法の効果に関しては,LGB当事者を対象として,性的指向と関連したポジティブな出来事と,一般的なポジティブな出来事,それぞれを介入のターゲットとした場合に,どのようにウェルビーイングに対する影響に違いがあるかを比較する。またその際,LGBとしてのアイデンティティが介入の効果にどのような影響を与え,またアイデンティティに対する考えや感情自身が介入によってどのように影響を受けるかについても検討する。なお,2023年度の調査から,性的指向と関連したポジティブな出来事は一般的なポジティブな出来事に比して生起頻度が低いことが示されているため,ウェルビーイング療法の実践方法については,回想法的な方法を用いるなどの工夫も検討する予定である。
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Causes of Carryover |
経験抽出法による調査の実施において,一定数の脱落者が生じたことから,当初の予定よりも「謝金」の支払額が低くなったためである。また,調査会社の依頼にかかる費用については,調査の一部(参加者のリクルート部分のみ)を依頼するなどの交渉により,当初の予定よりも実際の支払額が低くなった。これらの金額については,2024年度における調査参加者の追加募集において,「謝礼」に要する予算として利用する予定である。
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