ストーカー被害終了後も持続する被害者の精神的苦痛に関する研究

2022 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 22K13842
• Research Institution: Niigata Seiryou University
• Principal Investigator: 小林 大介 新潟青陵大学, 福祉心理学部, 助教 (80910968)
• Project Period (FY): 2022-04-01 – 2025-03-31
• Keywords: ストーキング

Outline of Annual Research Achievements

2022年度の研究目的はストーカー被害終了後も存続する被害による影響の持続期間や，長期的に残りやすい影響を明らかにすることであった。
2022年度は新たな調査を実施することができなかったが，過去に実施した元交際相手からの迷惑な接近を経験した被害者を対象とした調査のデータを再分析した。その結果，元交際相手からの接近の被害者が感じる心理的苦痛と，多様な種類の接近の経験，接近の継続期間，元交際相手の感情や欲求を抑える力に対する認知，元交際相手の情緒不安定性の認知が関連していることが明らかとなった。
このことから，恋愛関係解消後に元交際相手から多様な種類の接近を経験し，その接近の継続期間が長いと，被害者の心理的な苦痛が増加するという海外における先行研究と一致する知見が得られた。加えて，元交際相手の感情や欲求を抑える力が弱いと認知していること，元交際相手が情緒不安定であると認知していることも，被害者の心理的な苦痛を増加させるという新たな知見も得られた。
また，この調査のデータでは，元交際相手と別れてからの期間と元交際相手に対する現在の恐怖感を測定しているが，この二つの変数については関連が見られなかった。この結果は，別れてから時間が経過するだけでは元交際相手に対する恐怖感が減少するわけではないことを示しており，ストーカー被害終了後も元交際相手に対する恐怖感は持続する可能性を示唆している。
これらの分析結果の報告については現在論文を執筆しており，完成次第心理学研究に投稿予定である。
このことから，2022年度には，当初目的としていたストーカー被害終了後も存続する影響の検討と，長期的に残りやすい影響の検討は達成することができなかったが，その検討につながる基礎的な情報を収集することができたと考えられる。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

現在の進捗状況は遅れていると判断した。昨年度右手首を負傷し，研究遂行に困難が生じた。また，新型コロナウイルス感染による療養もあり，大学に出勤できない期間が生じたことも研究の進捗に影響したと考えられる。

Strategy for Future Research Activity

現在研究の進捗に遅れが生じている。そのため，本年度は，当初予定していた2022年度の研究と2023年度の研究を同時に進める予定である。2022年度に予定していた研究については，論文等の文献収集も完了しているため，早急に調査を実施する予定である。

Causes of Carryover

2022年度に予定していたインターネット調査を当該年度中に実施することが出来なかったため，次年度使用額が生じた。そのため，次年度使用額は昨年度実施することができなかったインターネット調査のための費用として使用する予定である。