2022 Fiscal Year Research-status Report
認知療法における「ソクラテス式質問」の作用機序の解明
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22K13851
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
重松 潤 富山大学, 学術研究部人文科学系, 講師 (20910227)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 認知療法 / ソクラテス式質問 / 腑に落ちる理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,認知療法におけるソクラテス式質問の作用機序について,クライエントの腑に落ちる理解に着目することで,その作用機序を明らかにすることである。 昨年度は,ソクラテス式質問の評価指標の作成を進めた。尺度研究のガイドラインであるCOSMINに則って原版の尺度の翻訳を行った。R5年度は原著者との議論を進め,評価指標の内容的妥当性の確認を行ったうえで,評価指標を完成させる予定である。併せて,指標の信頼性・妥当性を検証するための調査研究の準備を進めている。 また,ソクラテス式質問の効果に関わる要因と考えられる「腑に落ちる理解」と「自己効力感」について研究を進めた。具体的には,まだ知見の少ない腑に落ちる理解の効果について,腑に落ちる理解が感情制御の方略の効果に影響を及ぼすことを実験的に示した。特に,腑に落ちる理解が,認知療法の作用機序にも関わる感情制御方略である「認知的再評価」の効果に影響することが示唆された。この成果は国際誌に掲載された。また,認知療法で向上すると想定される特性的自己効力感に着目し,現代に適した特性的自己効力感の尺度の開発を行った。この成果は現在学会誌への投稿準備中である。今後は,これらの知見を総括して,ソクラテス式質問の効果との関連を検証する予定である。 これらの研究に並行して,認知療法の文献研究を進め,国内学会のシンポジウムを中心に発表を行った。これらの成果は,レビュー論文として投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで「腑に落ちる理解」に関する知見の蓄積がないことが課題となっていたが,R4年度は腑に落ちる理解に関する知見を国際誌に掲載することができた。これにより,本研究の土台を築けたといえる。また,ソクラテス式質問の評価指標の作成も進んでおり,R5年度には評価指標を用いた認知療法のプロセス研究を行うことが可能な見込みがあるため,上記の通り評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
R5年度はソクラテス式質問の評価指標を完成させ,ソクラテス式質問を用いた認知療法のプロセス研究を行う予定である。引き続き,クライエントの腑に落ちる理解や自己効力感等に焦点を当て,各要因の基礎的知見の蓄積も併せて進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で,一部旅費の使用がなかったため,次年度使用額が発生した。論文の英文校正,学会参加費に使用する予定である。
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