2023 Fiscal Year Research-status Report
生態学的合理性の観点から知覚的決定・メタ認知を理解する
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22K13870
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三好 清文 京都大学, 情報学研究科, 助教 (20788880)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 意思決定 / メタ認知 / 機械学習 / ヒューリスティック / 生態学的合理性 / 信号検出理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでに行った研究成果を論文に取りまとめる作業を中心に行った。まず、メタ認知行動の目標試行的調整についてのオンライン実験の結果をConsciousness and Cognition誌にて報告した。この合目的的調整は、最適性に根差した規範的計算フレームワークとは必ずしも合致せず、本研究の目指すヒト特異的な情報処理の解明に大きく資するものである。さらに、本研究課題を進めるうえで、ヒトの意思決定パフォーマンスを比較可能な形で定量的に評価する必要性が生じてきた。そのため、精神物理学の分野で定評ある測定フレームワークである信号検出モデリングを拡張し、新たなパフォーマンス測定モデルを提案した。また、その実行用パッケージを統計処理用言語Rにて実装し、心理方法系のトップ誌であるPsychological Methodsにて発表した。これは、研究1年目にJournal of Visionに発表した成果をさらに発展させ新モデルの実装まで繋げたものであり、研究の着実な進展を裏付けるものとなっている。さらに、本研究課題の中心的テーマである生態学的合理性の立場から、様々なメタ認知現象を説明するニューラルネットワークモデルを提案し、Nature Communications誌にて発表した。また、これらの成果および関連する最新の知見を開設論文としてまとめ、Elsevier社から刊行されるEncyclopedia of the Human Brainにて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題が中心に据える生態学的合理性の立場から、主要な意思決定現象を説明するニューラルネットワークモデルを、国際的な注目度の高いNature Communications誌にて発表することができた。それだけでなく、実験系、方法論系、解説系の論文を、それぞれ定評あるプラットフォームにて発表することで、関連分野の進展に大きく貢献することができたと考える。したがって、本研究課題はおおむね順調に進展しているものと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで提案してきたモデルに、情報収集の時間発展の要素を加える。予備実験データはすでに収集済みであり、それに基づいて予備的なモデルは作成してある。今後はさらなる実験データを収集し、モデルを完成させる。さらにこの行動モデルをニューラルネットワークに組み込むことで、ヒトと直接比較可能な枠組みを提案する。
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Causes of Carryover |
前年度において、研究計画をジャーナルに申請して審査を受けるRegistered Reportを行った。審査後に実験を開始する運びとなるが、審査に思った以上に時間がかかり、実験開始が次年度までずれ込んだため、その分の予算が次年度使用額となった。
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