2022 Fiscal Year Research-status Report
こころの理論に焦点をあてた認知症の障害解明と早期検出の試み
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22K13879
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
花塚 優貴 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 講師 (90867657)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | こころの理論 / 認知症 / アイトラッカー |
Outline of Annual Research Achievements |
「こころの理論」とは他者の精神状態を推し量るための能力であり、他者との円滑なコミュニケーションを行う上で極めて重要なものである。近年では認知症においてこころの理論に問題を抱えることが指摘されている。報告例も増えてきているものの、認知症患者がこころの理論に障害を持つまでのプロセスと、そのプロセス初期の兆候を活用した、認知症の早期発見のための知見が不足している。そこで本研究ではアイトラッカーを用いて、こころの理論課題を遂行中の認知症、軽度認知症および健常高齢者の比較を通じ、[1]認知症患者のこころの理論の問題の生理的な背景と [2]その知見を活かした、認知症を早期に検出するための兆候を明らかにする。本研究で得られる知見は学術面では「こころの理論課題の有用性を認知症にまで拡張すること」に貢献し、社会面では「認知症を早期発見するためのアセスメントツールの開発に役立つ成果」となる。 認知症の早期発見のために、近年注目されているのが「こころの理論」の有無を評価する誤信念課題である。誤信念課題の中でも、他者の心的な状態を推測する「第1次の誤信念課題」と「Aさんはx(物)がy(場所)にあると思っているとBさんは思っている」という入れ子構造を含む「第2次の誤信念課題」の成績が、認知症の兆候を早期に検出できるものとして特に期待が高まっている。しかしその一方で、認知症は言語理解に問題を抱える事例も指摘されている。そのため言語的な応答のみで認知症の誤信念課題の成績を評価することは、認知症におけるこころの理論の問題を理解するうえでは不十分である。今年度はこの課題を解消するために、言語教示を極力伴わない動画刺激を作成し、アイトラッキングの技法により、非言語的に認知症患者のこころの理論の能力を検討するための下準備を進めることに注力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究をもとに極力言語的な教示を含まない「こころの理論」を検証する動画を作成した。具体的には他者の心的な状態を推測する「第1次の誤信念課題」と「Aさんはx(物)がy(場所)にあると思っているとBさんは思っている」という入れ子構造を含む「第2次の誤信念課題」である。実験参加者のリクルートにも目途が立ったため、令和5年度中にこの刺激を用いた実験を行える予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に作成した動画刺激を用い、大学生を対象とした予備実験と認知症および軽度認知症の患者を対象とした本実験1を実施する。課題呈示中および呈示後の視線の動きについてアイトラッカーを用いて記録し、参加者の課題に対する視線パターンおよび注視時間を分析する。また刺激呈示後には言語的な回答も求める。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属先の異動に伴い、研究対象とする認知症患者の確保について計画の変更が生じた。そのため実験実施における実験協力者への人件費、および実験参加者への謝礼の経費を次年度に繰り越した。現在は実験計画を練り直し、令和5年度中に上記の経費を使用する予定である。また実験実施ならびにスケジュールの打ち合わせ、成果発表等の旅費の使用を予定している。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] 新型コロナ感染症罹患による時間認知変容の可能性2023
Author(s)
二村明徳, 花塚優貴, 越智隆太, 笠井英世, 黒田岳志, 大田進, 稗田宗太郎, 田中明彦, 相良博典, 小野 賢二郎, 河村 満
Organizer
2022年度 新学術領域「時間生成学」第2回領域会議
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[Presentation] Impairment of time perception in demented patients: linguistic assessment of past, present, and future.2022
Author(s)
Futamura A, Long T, Kinno R, Hanazuka Y, Ochi R, Midorikawa A, Kitazawa S, Ono K, Kawamura M
Organizer
International Symposium on Chronogenesis
Int'l Joint Research
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