2022 Fiscal Year Research-status Report
Additive number theory in number fields
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22K13886
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
甲斐 亘 東北大学, 理学研究科, 助教 (00804296)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 素元 / 位相群 / 篩法 / フーリエ解析 / ゼータ関数 / L関数 / 数体 / 組み合わせ論 |
Outline of Annual Research Achievements |
数体の整数環において、有界な領域にある素元の個数を、小さな誤差内で予言する「三井の素数定理」(1957年)の精密なバージョンを証明しプレプリントにまとめた。Hecke L関数のSiegel零点も考慮して誤差の改善を図るほか応用を見据えて柔軟性を増してある。応用としては、Green-Tao-Ziegler による素数の満たす線型方程式の理論を、数体に拡張する仕事を考えている。 Green-Tao-Zieglerの定理を数体に拡張するために、Green-Taoが過去に行なっていた複雑な組み合わせ論的計算を、数体でも遂行する作業に着手した。この計算が技術的には肝となる。自然数の場合と異なり、数体の文脈では、「数」と「イデアル」をきっちり区別する必要があり、同様の計算がこなせるかはアプリオリには大変不透明であるが、道筋は見えつつある。 また、以下のような、ツールの点検とも言うべき作業を進めることができた。まず、Gowersノルムに関するvon Neumann定理が、値が高階でも成立することを確かめた。具体的には、同定理は整数のなすアーベル群Zに値をとるアフィン線型写像について定式化されるのが普通であるところ、一般の有限階数自由アーベル群Z^nでもしかるべき形で証明できることを確認した。また、Gowersノルムの逆定理も値がZで知られていたところ、Z^nの場合も簡単な帰着の議論で示せることを確かめた。さらに、自然数の集合Nでよく用いられるテクニックである篩法の一部が数体でも通用することを確認した。具体的には、乗法的モノイドNに同型かつ、素元の集合に全順序が入っており、この順序と整合するようなN値の乗法的なノルム写像をそなえたモノイドに対して、いわゆる「篩法の基本補題」が定式化できて成立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から描いていた戦略はいまのところ機能している。考察を深めるに従い、予見していなかった技術的課題は勿論たびたび持ち上がってくるが、周辺文献を参照しながら解決できている。三井の素数定理は、三井自身の論文で述べられている形では、本研究課題に必要な柔軟性を持っていなかったので、三井の証明をほぼ辿りつつ現代的に書き直して必要な形で証明し直す必要があった。けれどもこの作業のおかげで当該定理を学ぶことは以前よりも容易になったと思われ、学界への貢献になったと信じる。
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Strategy for Future Research Activity |
Green-Tao-Zieglerの定理の証明を目指して作業を進める。Tao-Teravainen による証明の簡略化において、有限体上の代数幾何の結果であるWeil boundを使う箇所がある。これが、数体の場合でも同様の使い方で目的を達するかどうか検討するところから始めたい。それと並行して、もっと解析数論的なステップを数体の文脈で再現する試みもしていく。
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Causes of Carryover |
滞在中であるイタリアでの滞在許可取得手続が煩雑であることにより、シェンゲン域内の他の国での研究集会に出張する機会が制限された。この問題は一時的なものであるはずなので、次年度は積極的にヨーロッパでのイベントに参加していく。
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