2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13938
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小池 開 東京工業大学, 理学院, 助教 (30914551)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 圧縮性Navier-Stokes方程式 / 長時間挙動 / Green関数の各点評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は,分子気体力学にもとづいた流体構造連成問題の数学理論を構築することである.最終的には流れの方程式として,分子気体力学の基礎方程式であるBolzmann方程式を扱いたい.しかし,これはただちには困難であり,まずはBoltzmann方程式から流体力学極限を通して得られる,圧縮性Navier-Stokes方程式の場合に取り組むことが当初の計画であった.本年度の研究ではこの計画に沿って,1次元圧縮性粘性流体中を運動する質点の長時間挙動を調べた.具体的には,以下のような内容である.
先行研究(Koike, J. Diff. Equ., 2021)では質点の速度 V(t) の減衰に関して,上からの評価を得ていた.この解析の中では拡散波(diffusion waves)が重要な役割を果たしているが,拡散波だけでは長時間挙動の上からの評価しか得られず,下からの評価は得られなかった.一方,本研究の準備段階で得た成果として,新たに双拡散波(inter-diffusion waves)と呼ぶものを導入することで,下からの評価が得られることも分かっていた.この成果は未公表であったが,今年度中に論文として公表することができた(J. Math. Fluid Mech., 2022).しかし,この研究でもまだ完全には理解できない詳細な長時間挙動があることも分かっていた.今年度の研究では,拡散波や双拡散波を含む,高次の拡散波を体系的に構成し,流れの漸近展開を与えることに成功した.この結果により,摂動的な枠組みではほぼ完全に長時間挙動を理解できるようになったといえる.なお,この成果はプレプリント(https://arxiv.org/abs/2211.14121)として公表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように,Boltzmann方程式の場合に起こる現象を理解するために,当初の計画では,まず圧縮性Navier-Stokes方程式の場合を詳しく調べることにしていた.今年度はおおむねこの計画に沿って進行し,Boltzmann方程式の場合にも役立つであろうテクニックを開発することができた.一方,ここまでの研究は流れが順圧的な場合に限られている.当初の目論見ではエネルギーの発展方程式を含めたNavier-Stokes-Fourier方程式に対する結果も得たかったため,記載の区分とした.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では流れが順圧的な場合を扱っていたが,これはいくぶん単純化された流れである.実際,Boltzmann方程式に対する理論を構築するには,エネルギーの時間発展も考慮したNavier-Stokes-Fourier方程式に対する理解が不可欠であると考えている.この一般化には本質的に難しい点があり,数値計算も援用しながら現象を理解することを計画していた.今年度までに計算機に関する環境を整えることができたので,次年度ではこうした方策も念頭に研究を推進していく.
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Causes of Carryover |
今年度中にワークステーションを購入する予定だったが,コロナ禍で繰り越していた学振PDの研究費で購入することができたため,その分で次年度使用額が生じてしまった.次年度はここ数年中断していた国際共同研究に力を入れたいと考えており,そのための予算として使用することにしたい.
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