2022 Fiscal Year Research-status Report
Asymptotic analysis for partial differential equations of nonlinear waves with dissipation and dispersion
Project/Area Number |
22K13939
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
福田 一貴 信州大学, 学術研究院工学系, 講師 (60882214)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 散逸・分散型方程式 / 非局所分散項 / 非整数階分散項 / 解の漸近挙動 / 高次漸近形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は, 散逸と分散を伴う非線形波の偏微分方程式のうち, 非局所分散項や非整数階分散項を持つような方程式を取り扱い, それらの初期値問題に対する解の漸近挙動の解析を行った. 具体的な研究実績は大きく以下の二つである. (1) 散逸項を伴う一般化Fornberg-Whitham方程式に関する研究 分散効果が非局所的な畳み込み積分の形で与えられる, Fornberg-Whitham方程式について, その一般化方程式に散逸項を付与した問題の解の漸近挙動を考察した. この問題は非線形項が二次の場合に関しては, Fukuda-Itasaka(2021)の先行研究により, 解の第三次漸近形までが導出されており, 非局所分散項が解の漸近挙動に与える影響が明らかになっていた. 本研究では, フーリエ変換を通じた非局所分散項の分解を用いて, 非線形指数が二次よりも大きい場合に対する解の漸近挙動を解析し, 非線形指数に応じて解の第二次漸近形が分岐することや, 非局所分散項の影響は非線形指数が三次より大きくなければ第二次漸近形まではその影響が現れないことなどを明らかにした. (2) 三次の非線形項と非整数階分散項を伴う散逸・分散型方程式に関する研究 空間一次元において, 三次の非線形項を持つ移流拡散方程式に, 非整数階の分散項を付与した問題の解の漸近挙動を考察した. この問題については, Karch(1999)による先行研究により, 線形解の高次漸近展開とDuhamel項の第一次漸近形が導出されており, それにより解の漸近公式が既に構成されていたが, 本研究では積分方程式を詳細に解析することでDuhamel項の第二次漸近形を構成し, 結果として既存の漸近公式を一般化することに成功した. (入野耀太氏との共同研究).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画通り, 散逸と分散を伴う非線形波の偏微分方程式の初期値問題に関する研究に順調に取り組み, 解の漸近挙動に関する新しい進展があったと言える. 特に, 非局所分散項や非整数階分散項を持つ方程式をそれぞれ解析したことにより, 散逸効果がメインの方程式において, どのような形の分散項が解の漸近挙動にどのように影響を与えるかが, 徐々に明らかになってきており, 個別の問題の成果としてだけでなく, 一般論の構築に対する貢献も期待できる. また, 上述した二件の研究については既に論文が完成し学術雑誌へ投稿済みであり, 特に散逸項を伴う一般化Fornberg-Whitham方程式に関する論文は, 国際雑誌Journal of Mathematical Analysis and Applicationsに掲載が決定した. なお, 三次の非線形項と非整数階分散項を伴う散逸・分散型方程式に関する論文については, 国際雑誌にて現在査読中である. また, 上述した研究成果以外にも, 初期値の空間遠方での影響や外力項の影響を考慮した場合など, 関連する問題についての予備的な考察も行っており, 次年度以降の更なる研究の進展が期待できる. このため, 本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り, これまでの研究では主として分散効果と非線形効果に着目し, 散逸項が最も優勢となる方程式において, それらが解の挙動に与える影響について考察した. 今後の研究では, 初期値の形状や外力の影響をも考慮した問題についても解析を行っていきたいと考えている. 具体的には, 例えば初期値の空間遠方での減衰が緩やかな場合に, そのような初期値が解の漸近挙動に与える影響と, 非局所・非整数階の分散項の影響のどちらが優勢なのかなどに興味がある. また, 分散の効果が解の挙動に非常に強い影響を与えるような場合について, その解の挙動を外力によって制御し, 分散効果を緩和することができるか, という問題にも取り組んでいきたいと考えている. それらの研究については, 最も単純な散逸・分散型方程式であるKdV-Burgers方程式や, 流体の方程式であるNavier-Stokes方程式などの解析において, 幾つか関連する先行研究が知られているため, 本研究を推進するにあたって, まずはそれらの結果を精査することから始める.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは, 新型コロナウイルス感染症の影響により, 予定していた研究出張のうちの幾つかがキャンセルとなったためである. 次年度は, 昨年度実施できなかったために延期となったそれらの研究出張のための使用を検討している.
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Research Products
(9 results)