2022 Fiscal Year Research-status Report
非有界領域におけるナビエ・ストークス方程式の自由境界問題
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22K13945
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大石 健太 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (00906141)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Navier-Stokes方程式 / 自由境界問題 / 一相問題 / 二相問題 / 時間大域解 / 時間減衰評価 / 最大正則性 / 解析半群 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間三次元以上の場合の時間大域解の一意存在および減衰評価は既に得られていたため,空間二次元の場合を考察した.時間大域解の一意存在および減衰評価の証明には至らなかったものの,以下に記す主な難点(1)-(3)について解決の見通しが立った. (1) 線形化問題を抽象的なCauchy問題に帰着し,評価が難しい非線形項が非線形問題の解析で現れないようにするアプローチを取ろうとしたが,帰着後の方程式の解の評価からもとの方程式の解の評価を得ることが難しかった.そこで,帰着をせずにもとの方程式をそのまま解析し,評価が難しい非線形項を精密に評価するアプローチを取った.(2) もとの方程式を解析する場合,境界条件に現れる非線形項の評価が困難となる.しかし,半空間のトレース評価を用いてその項のある評価を示した.(3) 非圧縮性条件に現れる非線形項に起因する項の評価に困難が生じた.しかし,分数べきの微分を用いて精密に評価することでその項についてもある評価を示した. (3)で述べた評価を用いるために,分数べきの微分を含む形に空間三次元以上の場合の証明を書き直す必要があるため多少改善する必要ではあるが,(2), (3)で得られた評価はほぼ適切な評価と言えると研究代表者は考える.
また,以上の結果が二相問題に応用できることが分かり,齋藤平和准教授との共同研究として次の結果を得た:表面張力と重力を伴わない場合(ゆえに各流体の密度を任意の正数としてもレイリー・テイラー不安定性のようなことは起こらない)に,初期時刻において各流体が占める領域がそれぞれ三次元以上の上半空間と下半空間として,非圧縮性粘性Navier-Stokes方程式系の二相自由境界問題の解の一意存在および減衰評価を得た.また,空間二次元の場合も上記と同様の進捗状況である.この問題は,特に二次元の場合,上空から見た赤潮を含む海面の解析に応用される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1) 当初は,anisotropic Sobolev空間の埋め込みを用いることで,方程式系の時間大域解の一意存在が得られる初期値のクラスを拡張し,初期値の正則性に対する最適性を明らかにする予定であったが,この研究はあまり進んでいない.しかし,時間変数に関してL^1,空間変数についてBesovの枠組みで解を構成することで,初期値に課す正則性をさらに緩められると研究代表者は考えた.しかし,(a) その理論を勉強を進めていたこと (b) 本研究が二相問題へ応用できるとわかり,その方が重要だと考えて二相問題の解析を行っていたこと,この2つの理由から対応する結果は得られていない. (2) 難点が解決する見通しは立ったものの,当初予定していた,空間二次元の場合における方程式系の時間大域解の一意存在および減衰評価は得られていない. 以上の理由から,研究代表者は,本研究は当初の予定からやや遅れていると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) まず,空間二次元の場合における一層問題および二相問題の時間大域解の一意存在および減衰評価を証明し,論文を執筆する. (2) その後,時間変数についてL^1,空間変数についてBesov空間の枠組みで解を構成することで,初期値に課す正則性の緩和を目指す. (3) その後は,当初の計画を二相問題の研究に変更し,非圧縮性粘性Navier-Stokes方程式の二相自由境界問題に対し,時間・空間に関する時間大域的な周期解の一意存在および減衰評価(時間周期解の場合の場合は漸近安定性)の証明を目指す.
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Causes of Carryover |
他の業務のため、当初予定していた外国出張を実施することができなかった.今後の使用計画としては,他の業務の少ない二月から三月にかけて,L^1最大正則性や時間・空間周期解に詳しい海外の研究者に研究訪問を行う際の旅費に用いることを考えている.
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