2022 Fiscal Year Research-status Report
全空間上の圧縮性Navier-Stokes方程式の時間周期解の安定性問題
Project/Area Number |
22K13946
|
Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
津田 和幸 九州産業大学, 理工学部基礎教育サポートセンター, 特任講師 (60782414)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | Navier-Stokes方程式 / 時間周期解 |
Outline of Annual Research Achievements |
私の研究分野は非線形偏微分方程式の数学解析である. これまでに流体力学の基礎方程式である圧縮性および非圧縮性Navier-Stokes方程式の研究を行ってきた. これらの方程式系は, 解の存在, 一意性, 正則性, 安定性や漸近挙動などの偏微分方程式論におけるさまざま基本的課題を提供してきた方程式系であり, 豊かな数学的構造を備え,多様な物理学・工学的応用を有している. Navier-Stokes方程式はクレイ研究所のミレニアム問題に代表されるようにその数学的理論の深遠さゆえまだまだ未解決の部分が多く, 現在でも活発に研究されている. 時間周期的な流れは流体運動における基本的な現象であり, 多くの研究がなされてきたが, 一般にその解析は流れが無い静止状態の解析よりも難しくなる. 例えば, 安定性解析や, 領域が周期的に動く場合に発生する時間周期的流れを考えた場合,解の挙動を支配する線形化作用素(線形部分)が変数係数になるため, その線形作用素の解析に困難が生じて, いまだに解明されていないことが多い. そこで本研究では圧縮性Navier-Stokes方程式について強解が存在するための条件を数学的に詳しく明らかにするために,非有界領域における時間周期解の安定性を調べ, 最適な時間減衰評価の導出を目指す. 今年度はNavier-Stokes方程式に対して,領域が周期的に動く移動境界問題を考察し, ドイツ・ダルムシュタット工科大学のFarwig教授との共同研究により, 移動境界の初期値問題を作用素の半群理論で解くことに成功した. 応用として, 先行研究で得られた時間周期解の正則性を示した.さらに非有界領域での研究成果も得られ, 一連の研究成果を国内大規模の微分方程式関連の研究集会である「微分方程式の総合的研究」で招待講演した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はNavier-Stokes方程式に対して,領域が周期的に動く移動境界問題を考察し, ドイツ・ダルムシュタット工科大学のFarwig教授との共同研究(国際共著論文)により, 移動境界の初期値問題を作用素の半群理論で解くことに成功した. 応用として, 先行研究で得られた時間周期解の正則性を示した.一連の結果が国際学術で出版された. さらに非有界領域での研究成果も得られ, 一連の研究成果を国内大規模の微分方程式関連の研究集会である「微分方程式の総合的研究」で招待講演することができた.以上よりおおむね順調に進んでいると思われる.
|
Strategy for Future Research Activity |
水中において例えば魚の尾ひれが周期的に動くとき尾ひれの周りには周期的な水の流れが発生する. あるいは, 水風船で風船が周期的に振動するとき水風船内部では周期的な水の流れが発生する. これらの現象を厳密に数学的に解析することを考えたとき, それらはすべて非圧縮性Navier-Stokes方程式の, 境界が周期的に動く領域での時間周期問題と位置付けられる. 前者は外部領域の問題, 後者は有界領域での問題に相当する. このようにこの問題は日常生活において極めて自然な現象であるためその数学的な解析は重要である.しかしその研究にはいまだ未知なところが多い. 例えば外部領域の時間周期問題の先行研究は強解(通常の意味で微分方程式を満たす解)に対しては存在しない. そこで応募者の有界領域での研究で得られた知見をもとに, この動く外部領域での時間周期問題に取り組む. 現在得られた評価式やH無限大演算法と呼ばれる手法を駆使して研究を行う. ドイツ・ダルムシュタット工科大学のFarwig教授と引き続き共同研究を行う. 必要に応じて, ドイツへ渡航をする予定である. 上記の問題で成果が得られれば, 得られた知見を基に, 圧縮性navier-Stokes方程式の非有界領域上の時間周期解について考察する.
|
Causes of Carryover |
当初国際共同研究関連でドイツへの渡航を予定していたが, 相手国の新型コロナ感染拡大の影響により, 今年度の渡航を断念せざるを得なかったため次年度使用額が生じた. 今年度ドイツへ渡航し国際共同研究を行う予定である.次年度使用額を利用してドイツへ長期滞在をする予定である.
|
Research Products
(3 results)