2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K13963
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大森 祥輔 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (70777979)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | max-plus力学系 / 分岐現象 / リミットサイクル / 超離散化 / 離散力学系 / 非線形ダイナミクス / 正値差分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、max-plus代数構造に基づく非線形動力学(max-plus力学系)の構築を行い、非線形現象に対する新たな見方や数学的記述方法を提示することである。本年度は、Neimark-Sacker(NS)分岐(離散力学系におけるHopf分岐)及びリミットサイクルを示すmax-plus力学モデルの研究を、研究実施計画に則した形で重点的に行った。具体的な研究成果は以下の通り。 (a)モデルに含まれるパラメータとリミットサイクルを構成する状態数との関係性を明らかにした。また準周期の出現機構についての考察を行い、成果を得た。 (b)これまで知られていた max-plusモデル以外にもリミットサイクルを示すmax-plus力学モデルを発見しその解析を行った。 (c) 区分的なめらかな力学系の分野で知られている分岐であるBorder Collision Bifurcation(BCB)の二次元標準型(S. Banerjee, et.al., Phys. Rev. E., 59 4052 (1999))の観点からmax-plusモデルを解析し統合を行った。 また、上記の研究に関する論文も投稿し、2022年度内では2本の掲載が完了した。更に現在既に3本の論文投稿を行っている状態である。学会発表については、9月の応用数理学会、物理学会、RIMS研究集会(力学系及び応用可積分)、8月、11月の可積分研究集会で研究成果の発表を行った。 リミットサイクルは物理学や生物学、生化学を始め多くの非線形現象、パターン形成現象で見られ、リズム現象・周期現象を解析する際に重要な役割を持つ動力学的挙動である。したがって、本年度の研究成果に基づいて、リミットサイクルを有するmax-plusモデルの現実系への幅広い応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究進捗状況が計画以上に進展していると考えた一番の理由は、本年度新たにNS分岐及びリミットサイクルを有するmax-plusモデルを発見できたことである。昨年度までに知られていたmax-plusモデルだけでは、そのモデルが有する力学的性質が一般的な性質なのか、モデル独自のものなのか判断できないでいた。本年度は新たに2つの類似なmax-plusモデルを発見することができたため、従来のモデルと比較、議論することが可能となった。結果として、max-plusモデルにおけるリミットサイクルが有する一般的な力学的性質と、個々のモデルの形から起因する性質とを明瞭に分けることができ、研究実施計画で予定していた力学系的性質の調査が大きく進展した。特に大きく進展した内容は以下の通り。 (1) モデルに含まれるパラメータとリミットサイクルを構成する状態数との関係性 リミットサイクルが有限個の離散状態からなるという性質は、max-plus力学系が有する一般的な性質だということが分かってきた。一方で、リミットサイクルを構成する状態の数自体や準周期の出現の有無は個々のモデルに依ることが分かった。 (2) Border Collision Bifurcation(BCB)の二次元標準型との関係性を議論。 BCBは、区分的になめらかな力学系の分野でみられる代表的な分岐であり、ロバストなカオスを生成することでも知られる。この二次元標準型が、既に得られていたmax-plusモデルと同じく、今回新たに発見されたmax-plusモデルとも関連づくことが分かった。特に、これらのmax-plusモデルがBCBの標準型として記述できる場合があることが分かった。この結果を基に、異なるmax-plusモデルの統合や解析を行うことが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究進捗状況を踏まえ、今後の研究もこれまでの予定通り進めていくことが可能であると考える。具体的には以下の通り。 (a) max-plusモデルとカオス力学との関係性の考察 これまでの研究でSel’kovモデルや負のフィードバックを持つ微分モデルから導出されるmax-plusモデルがBCBの標準形で記述できることが分かっている。そこで先ずはこれら二つのmax-plusモデルを用いてロバストカオスが生じるための条件やロバストカオスとの関係性を示す。ここで、ロバストカオスは周期窓が無いカオスであり、BCBから引き起こされる。また、ロバストカオスを有する代表的力学系であるLozi写像に着目して、得られているmax-plusモデルとLozi写像を比較することで、max-plusモデルにおけるロバストカオスの一般的考察を行う。最終的にはmax-plus代数構造におけるカオスなる現象に対する考察を行う。 (b) 相互作用を加えた場合に得られる時空パターンの解析。 既に得られているNS 分岐を示すmax-plus モデルに対し拡散相互作用に相当する相互作用を加え、得られる時空パターンを解析する。また、max-plus モデルのおける拡散相互作用が必ずしも明確になっていないため、拡散相互作用として相応しい隣接相互作用の特定も行う。更に得られたモデルに対してCA 化を行い、先行研究(例えばD. Takahashi, et.al., J. Phys. A:Math. Gen. 34 10715(2001))との比較を行う。 なお、研究(a)に関しては既にいくつか結果を得ており、2023年8月に日本で開催される応用数理学会国際会議(ICIAM)での発表を予定している。その他の研究においても結果を得次第研究集会で研究を発表し、随時論文を発表する。
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Research Products
(13 results)