2022 Fiscal Year Research-status Report
Diagonalization of max-plus matrices and its applications
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22K13964
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
西田 優樹 東京理科大学, 工学部情報工学科, 助教 (70906601)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | max-plus代数 / 離散事象システム / 固有ベクトル / 上三角化 / 対角化 |
Outline of Annual Research Achievements |
離散事象システムの漸近的な振る舞いを調べるうえで,max-plus代数上の行列固有値に関する理論を整備することは重要である.本年度は,max-plus行列の固有多項式の相異なる根に付随するベクトルが互いに1次独立であることを示した.この結果は論文誌に投稿中である.また,max-plus行列が優対角という性質を持つ場合に,固有値や固有ベクトルを用いて行列を標準形へと相似変形できることを示した.ここで得られる標準形は上三角行列であり,対角行列と同様にべき乗の計算が容易に行える.優対角行列は,固有多項式のすべての根の重複度が1となるような行列のうちの代表的なものである.そのため,より一般の行列に対する対角化あるいは上三角化を考えるうえでの基礎になる結果が得られたことになる.この結果は複数の学会で発表され,論文誌への投稿を準備中である. 代数的固有ベクトルの導出過程ではmax-plus代数上の線形方程式を解く必要があるが,その解法の1つに交互法がある.交互法では通常は1つの解しか見つけることができないが,それを適当な初期ベクトルの集合に適用することで,解空間の基底をなすベクトルをすべて求めるアルゴリズムを考案した.これは,固有値問題の観点からは,「固有ベクトル」から「固有空間」へと広まったことを意味する.この結果は論文誌に投稿中である.また,交互法における実際の計算を高速化するため,行列の疎化を利用した新たなアルゴリズムを開発した.これは,最大値をとる過程で真に必要な成分は少数に限られているというmax-plus代数の本質を用いた手法であり,他の様々な計算への波及効果が期待される.この結果については査読付き国際会議ACDA23での発表が決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画を遂行する上での準備として挙げていた「代数的固有値の1次独立性」および「線形方程式の解空間」に関する理論については,本年度内に十分な成果を上げることができた. また,対角化ではなく上三角化ではあるものの,優対角行列という基本的な場合には標準形を完全に求めることができた.Max-plus代数上での行列の相似変形の定義から,通常の代数での対角化はmax-plus代数での上三角化に対応していると考えられる.また,行列の冪の計算においては上三角化でも容易であるため,十分に研究が進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
固有多項式の根の重複度が1よりも大きい場合には,行列の相似変換に必要な代数的固有ベクトルが不足する.この点を解決するために,ジョルダン標準形の理論を参考にして新たなベクトルの列を構成することを試みる.また,max-plus行列の冪を計算する際にCSR分解と呼ばれるものが有効であるという知見を文献調査により得た.今後はこれと固有値問題の関連を調査することを視野に入れて研究を進める.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響が長期化し,国際会議への参加ができなかったため.
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Research Products
(4 results)