2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13966
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
延東 和茂 近畿大学, 理工学部, 助教 (90822304)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | セルオートマトン / 確率セルオートマトン / 確率過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度に引き続き、多近傍拡張された確率セルオートマトンの漸近挙動の解析について研究を行った。昨年度は、5近傍に拡張された確率セルオートマトンについてその時間発展を離散的な確率過程ととらえ、確率過程の手法を用いることで系の極限分布と、確率変数の期待値としての平均流束(基本図と呼ばれる、系の漸近挙動における運動量平均の保存量密度依存性を示すもの)を具体的に導出することに成功した。今年度はこの研究をさらに推進し、任意の有限な近傍において、上記の手法を用いて解析可能な系を選別することに成功した。また、それらの極限分布を構成するための確率比(確率系の漸近挙動において各状態がどのような割合で生起するかという比率)を導出することにも成功した。これらの確率比と、各状態の状態数を表す分配関数を組み合わせることで、確率セルオートマトンの極限分布の具体形が導出されることとなる。 次に、確率セルオートマトンの局所的な漸近解に関する関係式として、その存在が予想される分解仮設について、昨年度に引き続き研究を行った。これは、空間有限系における極限分布から導かれる局所解に関する期待値と、空間無限系において予想される分解仮設を、超幾何関数の性質を用いた極限操作によって対応付けるという試みである。拡張系におけるこの対応付けはいまだ成功しておらず、無限系における適切な確率空間の設定を改めて考慮する必要があると予想される。 これらの研究結果をもとに、8月に開催された国際学会において1件の口頭発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分解仮設に関する有限系と無限系の対応付けはいまだ成功に至っていないが、一方で上述したように任意の近傍で極限分布が導出可能な確率セルオートマトンを選別することに成功しており、当初の目的である確率セルオートマトンの網羅的解析手法を構築という点において順調な進捗があったとと考えられる。また、今年度は測度論的力学系分野における専門家と定期的な情報交換を行うことができ、エルゴード理論の観点から確率セルオートマトンを解析するための土台作りを行うことができたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きこれまでの手法による解析を発展させつつ、測度論的力学系の観点から確率セルオートマトンの解析を進めていくことを計画している。これによりいまだ試行錯誤が続いている分解仮設に関する研究を深化させることができると考えている。また、応用面では状態変数を連続体に拡張したファジーセルオートマトンについて、その確率拡張と解析を行う予定である。ファジー拡張系はこれまでの多近傍拡張とはまた違った方向性での系の拡張であり、このファジー拡張系に対してもこれまでのアプローチが通用するか試行しつつ、測度論的力学系の手法を用いた新たな解析を行うことを計画している。
|
Causes of Carryover |
今年度は海外での国際研究集会への出張を計画していたが、現任校へ転任したことで計画を変更せざるを得なくなった。次年度は主に国内の共同研究者、当該分野研究者との対面での議論、情報収集を複数回計画している。
|