2022 Fiscal Year Research-status Report
行動の拡散を表す閾値モデル:相転移の解明と理論の一般化
Project/Area Number |
22K13967
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
翁長 朝功 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (90823922)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ネットワーク科学 / 金融市場 / ゲーム理論 / 伝播現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
伝播現象とは、感染症、意見や情報、金融市場における取引など、イベントが次のイベントの発生を引き起こす現象の総称である。これらの現象は、ネットワークを通して社会または金融市場に伝播していく。伝播現象に関する研究は世界的に活発に行われているが、未解決問題は山積している。また、金融ネットワークなど経済学分野への貢献も期待されている。本研究課題の目的は、伝播現象におけるバースト性について、理論的に解明し、複数の伝播現象への応用を行う事である。 2022年度は、1つ目に、2財のネットワーク・ゲームの分析を行った。Zoom などのコミュニケーション・ツールや、キャッシュレス決済などの通貨は、他者と同じものを使うと便利である。このような財は社会ネットワークを通して拡散する。1財の拡散は Kobayashi and Onaga, Economic Theory 2022 の方法で分析が可能である。補完または競合する2財がどのように拡散するかについて、分析手法を構築した。競合する財の場合には、初期に生じた小さな差が次第に増幅される。そのため、魅力度が同等の財でも、対称的な均衡に辿り着かず、片方の財のみが拡散することを明らかにした。 2つ目に、金融の投げ売り連鎖に応用した。株価などの金融資産の状態は連続値である価格で特徴づけられる。これまでの、伝播現象の分析法は主に二状態に限られていた。連続状態である金融資産をモデル化するために、多状態の閾値モデルを提案した。このモデルの解法として、近似マスター方程式を用いて分析する理論を構築した。理論と数値シミュレーションを比較し、理論の妥当性を検証した。arXivにアップロードし、国際誌への投稿を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2財のネットワーク・ゲームにおいて、拡散の不安定性を明らかにした論文が、1本の査読付き論文として出版されたため、予定以上の成果を上げることができたと言える。金融資産の投げ売り連鎖に応用した研究の方も、すでに国際誌への投稿を行っており、査読中である。上記の理由により、今年度は「概ね順調に進展している」と自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、今年度得られた解析法及び解析結果を基盤としながら、拡散時間の分析など発展となる解析を進める予定である。また、すでに論文でまとめた成果について、国際会議で発表を行い、認知度を高めることを行なっていく。
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Causes of Carryover |
規模の大きい数値計算を行うために、高性能計算機の購入を予定していた。購入しなくとも利用できることになったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は今後、成果発表費用等に活用する計画である。
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