2023 Fiscal Year Research-status Report
行動の拡散を表す閾値モデル:相転移の解明と理論の一般化
Project/Area Number |
22K13967
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
翁長 朝功 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (90823922)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ゲーム理論 / ネットワーク / 複雑系 / 物理学 / 経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は, ネットワークゲーム理論のモデル分析に注力した. ゲームのポテンシャル関数を用いることで, イジングモデル, より正確にはスピングラスモデルに対応づけられる. 統計物理学の知見が分析に役立つ. ゲーム理論のスピングラス類似相について一定の成果が出たため, 本項目について記述する. 経済学や工学の多くの問題は、ゲーム理論で定式化することができる. 現実世界の問題には, しばしば社会ネットワークで繋がったN人のプレイヤーが現れる (Kobayashi and Onaga, Dynamics of diffusion on monoplex and multiplex networks: A message-passing approach, Economic Theory, Volume 76, Pages 251-287, 2023). この種のゲームは, ネットワークゲーム理論として近年有用な定理が得られている. ネットワークゲームについては, Jackson and Zenou のハンドブックにまとめられている (Matthew O. Jackson and Yves Zenou, Games on Networks, In Handbook of Game Theory with Economic Applications Volume 4, Pages 95-163, 2015). しかしながら, 具体的に解を求める手法については確立されていない. 具体的に解を求める手法を得るために, 本年度は, まず, ネットワークゲームの標準的なモデルを構築した. そして, パラメータの値に応じて, 解が4つの場合に分類できることを明らかにした. 最後に, 4つの場合のうち3つの場合まで, 解を求めることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトの成果物として, ネットワークゲーム理論の定量的な解法の構築が挙げられる. ゲームのポテンシャル関数を用いることで, 統計物理学で知られたスピングラスモデルに厳密に対応づけることができた. なお, Viana-Bray型スピンモデルである. このことにより, 統計物理学で有益と知られるキャビティ法などが適用可能であることがわかった. 定量的な解法の構築に大きく近づいた.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては, まず, 4種類の解のうち残りの1種類について解法を得ることを行う. 次に, 現在の解析手法について, 理論上の詰めを行うことを考えている. 2人ゲーム, N人全結合ネットワーク(平均場)ゲーム,および, N人ランダムネットワーク(疎結合)ゲームの3つについて, 解の違いを比較し対比を明瞭にする. また経済学的な視点から純粋戦略および混合戦略という概念との対応づけなどを行う. 論文として投稿・出版可能な形に研究成果をまとめることを予定している.
|
Causes of Carryover |
既に所有しているワークステーションなどのリソースを有効活用したため, 次年度使用額が生じた. 翌年度の助成金と合わせて, 得られた研究成果のより精細な分析および成果発表費用などに活用する.
|