2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13971
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
橋本 一成 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10754591)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メゾスコピック系 / 電子間相互作用 / 熱電効果 / 非エルミート / 例外点 / 電流ノイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は2重量子ドットが2つの電極と結合した系における電子輸送及び熱電効果について集中的に研究を行なった. この系において、ドット系内の電子ダイナミクスを支配するリンドブラッド型量子マスター方程式の時間発展生成子であるリウビリアンのスペクトルが、例外点と呼ばれる非エルミート系特有の縮退点を持つ.例外点では固有値だけでなく対応する固有ベクトルが重なり、リウビリアンは対角化できずにジョルダンブロック構造をもつ.その結果、例外点における電流の過渡ダイナミクスは単純な指数減衰ではなく冪的な特異性を示す.本研究では、この例外点における定常電流ノイズを詳細に分析した結果、ノイズスペクトルの線形が非ローレンツ型の線形を示すことを発見した.これは、例外点におけるリウビリアンのジョルダンブロック構造に起因する冪的時間発展がノイズスペクトルのローレンツ型線形からの狭小化を招いた結果である.そのスペクトル線形は例外点の次数と一対一対応しており、ノイズスペクトルを観測することでメゾスコピック系のリウビリアン例外点の存在とその次数を実験的に観測可能であることを明らかにした.例外点は開放量子多体系のリウビリアンで頻繁に出現する特異なスペクトル構造であり、それが電子輸送に与える影響を理解することは、量子多体系の熱力学的性質を議論する本研究の遂行にとって重要である. また、本年度の研究では、2重量子ドット系の電子間クーロン相互作用が電極間に生じる熱電効果に及ぼす影響の分析にも着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定していなかったリウビリアン例外点の電子輸送に対する影響についての検討を行なった結果、量子協同現象が熱電効果に与える影響についての検討にやや遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の検討により、リウビリアン例外点が電子輸送に及ぼす物理的影響については多くの知見が得られた.リウビリアン例外点は量子多体系を介した量子熱電効果の研究においても頻繁に現れるスペクトルの特異性であるため、今後の研究遂行においてもその影響を考慮することが必要である.令和5年度に得られたリウビリアン例外点の物理的影響に関する知見をもとに、令和6年度には本格的に量子熱電効果の検討に集中的に取り組む予定である.
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Causes of Carryover |
量子多体系の熱電効果に関する本格的な研究にやや遅れが生じたため、数値計算に必要なコンピュータの仕様決定が難航した.その結果、令和5年度内の機材取得が困難となったため、令和6年度に繰越となった. 令和6年度には早急に仕様を決定し、機材を取得して研究遂行にあたる.
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Research Products
(4 results)