2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22K14010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鬼頭 俊介 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (20887327)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電子軌道 / 放射光 / X線回折 / スピン-軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
4d, 5d, 4f電子系では相対論的スピン-軌道相互作用の影響がその物性に顕在化することがある。この結果、スピンと軌道の自由度がもつれ合い電子密度を再構成することで、多極子秩序を形成する。しかし、これまで「隠れた秩序」と呼ばれる多極子秩序状態を電子密度分布として実空間で観測した例はなかった。本課題では、大型放射光施設SPring-8における高エネルギーX線回折と、申請者が独自に開発したコア差フーリエ合成法を組み合わせることで、多極子秩序の実空間観測を目指した。 2023年度はパイロクロア型酸化物R2Ir2O7 (R = 希土類: Pr, Nd, Eu)に着目した。特に、今年度はこれまでよりも価電子密度分布をより高精度に観測するための実験・解析条件を確立した。これによって、Rサイト周りにおいて、4f軌道を占有する価電子密度分布の観測に成功した。価電子密度分布を可視化する際には、第一原理計算によって得られた原子散乱因子を用いた。Rサイト周りの価電子密度分布から直接的に抽出した4f軌道の量子パラメータは、スピン-軌道相互作用と結晶場を考慮した計算結果とよく一致することが分かった。 次のステップとして、より複雑な異方性を有する5d軌道の観測を目指し、Irサイト周りにおける価電子密度分布の観測を行った。しかし、得られた価電子密度は大きく乱れており、5d電子の異方性を捉えることはできなかった。検証の結果、5d電子の観測には現状のSPring-8における単結晶X線回折実験では、強度のダイナミックレンジと空間分解能が不十分であることが分かった。この点については、2027年度以降に予定されているSPring-8-IIのアップグレードによって、強度のダイナミックレンジと空間分解能の大幅な向上が期待されるため、将来的には5d電子の観測が実現する可能性が高いと考えられる。
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[Presentation] One-dimensional Static Short-range Orbital Order in Spin-glass Pyrochlore Y2Mo2O7 Observed by Synchrotron X-ray Scattering2023
Author(s)
Shunsuke Kitou, Hitoshi Mori, Hikaru Fukuda, Kentaro Ueda, Yoshio Kaneko, Yuto Hosogi, Takeshi Hara, Yuiga Nakamura, Kunihisa Sugimoto, Yuichi Yamasaki, Hironori Nakao, Hajime Sagayama, Taishun Manjo, Daisuke Ishikawa, Alfred Q. R. Baron, Hiroshi Sawa, Ryotaro Arita, Yoshinori Tokura, and Taka-hisa Arima
Organizer
International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2023
Int'l Joint Research