2022 Fiscal Year Research-status Report
Studying modification-pattern-dependent structure and function of long chromatin array via reconstitution and single molecule observation
Project/Area Number |
22K14016
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
深井 洋佑 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (10845176)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | クロマチン / 一分子観察 / ヒストン修飾 / 生物物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞種に依存した遺伝子発現制御は多細胞生物の基本的な細胞機能の一つであるが、この協同的な発現制御に大規模なクロマチン構造の変化が関係していることが近年の技術の発展によって明らかになりつつある。細胞内でクロマチン構造とヒストンの化学修飾パターンの間に相関があることが見出されているが、修飾パターンと構造の因果関係についてはさらなる理解が求められている。 このような状況のもと、ヒストン修飾パターンの違いがどのように構造の変化と関係するか、という問いに再構成的に答えるために、ヒストン修飾部分がパターンをもつ長いクロマチンをボトムアップ的に再構成する手法を開発している。具体的には、ヒストンタンパク質八量体にDNA鎖を巻きつけた後に結合することで、ヒストン修飾部分のパターンを12ヌクレオソーム(12mer)単位で制御した長い(96mer)クロマチン鎖を再構成する手法を考案した。このクロマチン鎖について、塩濃度やクロマチン構造を制御すると考えられているタンパク質の濃度変化による構造変化を一分子観察することを目指して実験を進めている。 本年度は特に、クロマチン再構成・多色全反射顕微鏡を用いた一分子観察について再現性の向上を目指して条件検討を行い、さまざまなアセチル化修飾パターンをもつ再構成クロマチンの観察を行った。結果として、異なるアセチル化パターンを持ったクロマチンの異なる塩濃度条件での観察に成功した。また、再構成したクロマチンの原子間力顕微鏡を用いた一分子観察に成功した。さらに粗視化モデルの検討などを行い、論文化を目指して研究を進めている。加えて、画像解析に用いるために開発したロバストな粒子トラッキングソフトウェアLapTrackについて技術検証を行い、論文を執筆して投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クロマチン再構成系・一分子観察系のそれぞれについて再現性に関わる予期しない問題があったため条件検討が必要であったが、再現性を改善するための実験条件を見つけることができた。実験系からどのような知見を得ることができるか明らかにすることが優先的に必要であると考え、メチル化ヒストンより解釈が容易であると考えられるアセチル化修飾ヒストンのパターンの違いによるクロマチン鎖の性質の違いを計測することに焦点を絞り実験を行った。一分子観察のデータを収集し、現在論文執筆に向けて取り組んでいる状況である。さらに、原子間力顕微鏡を使用して、再構成したクロマチンが想定されるヌクレオソームパターンを持つことを示すことができた。加えて、解析に必要なソフトウェアを一般に利用可能にし、Bioinformatics誌に論文を掲載した。以上の点から、計画の変更はあったが、当初目的に向けての研究は概ね順調に進んでいる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、これまで確立した一分子観察系・原子間力顕微鏡の観察系を用いて、アセチル化ヒストンのパターンに応じて長いクロマチン鎖の性質がどのように変化するか調べる。クロマチンの粗視化モデルである1CPNモデルのシミュレーション結果や理論との比較を行い、生物学的な意義についても考察して論文を出版する。 さらに、次世代シークエンサーを用いた手法やクライオ電子顕微鏡を用いた観察・光ピンセットを用いた引き伸ばし系などを用いて、さらに高解像度で構造を特徴づけ、モデルの構築につながるような知見を集めることを目指す。より解析を容易にするために、完全な96merを精製する手法についても検討を行う。アセチル化ヒストンにくわえて、H3K9me3ヒストンや結合タンパク質・核抽出液に対象を広げ、これらについて修飾パターンと構造の関係を調べる実験を行う。
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Causes of Carryover |
最初に観察するサンプルをメチル化ヒストンからアセチル化ヒストンへ変更したことなど、研究計画の詳細が変化したことにより当該経費が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせ、観察に用いる試薬やメチル化ヒストンに関わるタンパク質精製に必要な物品などに使用する予定である。
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