2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K14018
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横田 宏 京都大学, 人間・環境学研究科, 特定研究員 (10846356)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞内相分離 / 相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、分子配向を持つ成分の影響が液滴形成の条件に及ぼす影響を定性的に調べるため、配向の自由度を持たないタンパク質 (I成分)の濃度と配向自由度を持つタンパク質(A成分)の濃度と溶媒 (s成分)の濃度とを変数とする三成分の場の理論モデルを構築した。構築した三成分のモデルを用いて、二相共存を示すバイノーダルラインをGibbsのtriangle上で描いた。今回のモデルでは、二相間での各成分のケミカルポテンシャルが等しいという条件と二相間での静水圧が等しいという条件とから、バイノーダルラインを描いた。 その結果、相互作用パラメータを小さい値から大きい値へと変化させていったとき、I -A成分間にバイノーダルラインが現れ、s成分の濃度が大きい領域へと移動した。さらに相互作用パラメータの値を大きくしていくと、I-s成分間にバイノーダルラインが現れ、A成分が大きい領域へ移動した。さらに、相互作用パラメータの大きさがある値へ達すると二つのバイノーダルラインが臨界点を通して重なり、相分離領域が増大するという現象が見られた。この領域では、各成分の密度ゆらぎが相分離のダイナミクスに影響を与えうることを強く示唆する。 ところで、細胞内相分離によって得られた液滴は化学反応場として働くと考えられている。そこで、化学反応に応用可能な合意制御の理論を構築し、その安定性を調べた。ここでは、例として、エージェント間の相互作用が時間的な遅れを持ち、相互作用するエージェントもまた時間変化しうる系の合意に達成する条件を調べた。 その結果、相互作用するエージェントが時間的に変化する場合であっても、合意に達する条件を導いた。この結果は、例えばタンパク質の構造変化によって、相互作用の時間的な変化が示されているような系における化学反応の議論へと拡張できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた三成分系の相図を描けたことと、さらに、相図から配向自由度を持つ成分の濃度ゆらぎが相分離ダイナミクスに及ぼす影響が明示的に現れる相互作用パラメータの領域を得たため、おおむね順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得た配向自由度を持つ成分の濃度ゆらぎが相分離ダイナミクスに及ぼす影響が明示的に現れる領域に着目して、その濃度場のダイナミクスを明らかにする。具体的には、本年度に構築した自由エネルギーを下に濃度場の時間発展方程式 (Cahn-Hilliard-Cook方程式)を導いて、それを解くことで、各成分の濃度場の時間発展をあきらかにする。
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Causes of Carryover |
今年度の研究においては、主に解析計算とそれに基づいた比較的軽い数値計算を行い、結果が得られたため、大量の計算資源を有する計算機の購入の必要がなかったため。
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