2022 Fiscal Year Research-status Report
数値計算による中性粒子枯渇現象の密度限界・密度振動への影響の解明
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22K14020
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
諌山 翔伍 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (30875159)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヘリコンプラズマ / 中性粒子密度枯渇 / プラズマ密度限界 / 3流体数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
中性粒子枯渇現象の基本的な特性を理解するため、空間2次元の数値計算モデルの構築と数値計算コードの高速化を行うことを本年度の目標とした。本流体コードは電子流体について、電子慣性を無視(ドリフト近似)した運動方程式、電子のエネルギー方程式、ポアソン方程式をセルフコンシステントに取り入れている。そのため陽解法の場合、時間ステップはプラズマ周波数と衝突周波数の比で決まる誘電緩和時間(電子の運動が電場をスクリーニングする特徴的なタイムスケール)よりも小さくとる必要がある。特に10^19 m^-3の密度を超えるヘリコンプラズマ生成の数値計算では、誘電緩和時間が光速で決まるCFL条件よりも十分に小さくなる。これまでの先行研究では、電子とイオンの両方の運動方程式をドリフト近似する手法やポアソン方程式を半解法で解く方法が提案されている。しかしながら、中性粒子の運動はイオンの運動によって決まるため、我々の問題の場合には、イオンの慣性項を無視するドリフト近似は適当でない。また、今回我々はポアソン方程式を半解法で解く方法を試したが、密度が10^19 m^-3程度になると数値不安定を引き起こす結果となった。したがって、現状本モデルでは、電子流体については完全な陰解法を用いており、これまでにMPI並列(30cpu数を使用)により約12倍の高速化を実現している。ヘリコン放電が定常状態(~100 μs)になるまでの所要時間はおおよそ30日間である。現在は本モデルを用いて中性粒子枯渇現象の解析を進めている。また、今後の機械学習とGPUを活用したコードの高速化を念頭において、ニューラルネットワークにより流体計算を行う手法も確立した。次年度については、中性粒子枯渇現象の解析を引き続き進め、更なるコードの高速化を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
流体コードの高速化を目的とし、現在検討できる様々な手法を試みた結果、電子流体については完全な陰解法を用い、MPI並列(30cpu数を使用)により約12倍の高速化を実現した。現在は、本2次元モデルを用いて中性粒子枯渇現象の解析を進めている段階である。したがって本年度の目的は達成されたといえる。しかしながら、今後3次元などより大規模な数値計算を行う場合には流体コードの更なる高速化が不可欠である。最近の研究では、機械学習を用いて数値計算を高速化する手法もいくつか提案されている。そこで、本年度は今後の機械学習の活用を念頭として、流体計算を機械学習[Physics-Informed-Neural-Network (流体方程式を満たすようにプラズマパラメータの時空間発展を予測する手法)]で行う方法をPytorchを用いて確立した。本研究成果については現在論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
中性粒子枯渇は高周波プラズマ源の密度限界を決める要因の一つとして考えられているだけでなく、プラズマの安定性に悪影響(プラズマ密度振動)を及ぼすため、応用面においてはこの問題を克服することが課題となっている。次年度では、本年度チューニングされた2次元(径方向r-軸方向zの空間)流体コードを用いて、中性粒子枯渇がシステム全体でどこで起こるのか、また中性粒子枯渇により引き起こされるプラズマ密度振動の周期が何によって決まるのかを明らかにする。またこれらの現象のパラメータ(入力パワー、背景磁場、中性ガス圧、装置形)依存性なども調査する。これと同時に、数値計算と直線プラズマ装置を用いた実験との比較も同時に進める予定である。 さらに本研究の最終年度には、周方向空間の非一様性を考慮に入れ、プラズマ生成、中性粒子枯渇、ドリフト波乱流による異常拡散をセルフコンシステントに取り入れた流体コードの開発にも取り組む予定である。以上により得られた結果を基に、プラスマの密度限界や密度振動を克服するための中性粒子供給システム開発に向けて、ガスパフのノズル形状や供給位置の調整を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、オンライン参加の学会が多かったため、旅費の支出が予想される額よりも低かったことである。次年度はその分を出張費や論文投稿料に充てる。
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