2022 Fiscal Year Research-status Report
宇宙観測による暗黒物質探査の新展開:解析的暗黒物質ハローモデルを用いた多面的考察
Project/Area Number |
22K14035
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
廣島 渚 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (60845741)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 構造形成 / 宇宙論 |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質サブハローの構造形成について、最小質量ハローから最大質量ハローまでの質量関数を予言する新たな準解析的モデルを構築し、論文として出版した。本モデルは拡張プレスシェヒター理論に基づいており、降着時点でのサブハロー質量関数を新たなパラメータを導入することなく記述可能である。降着後の潮汐力による進化についても解析的モデルを組み合わせ予言可能な枠組みとなっている。得られた結果は降着時点・進化後共に宇宙論的N体計算で予言されるものと一致している。構築したモデルに基づき、統計効果や親ハロー質量の不定性がサブハロー質量関数に与える効果を定量化し、観測量と内的な質量関数を結びつけることに成功した。また、小質量のサブハローについて現在宇宙での質量関数の潮汐モデル依存性についても検討を行った。 構成した準解析的モデルを宇宙論的の検証に適用して論文として出版した。質量関数の計算において初期条件となるのは質量ゆらぎの分散であるが、これを宇宙初期のパワースペクトルがピーク構造を持つ場合について現在宇宙でのサブハロー質量関数を求め、銀河形成条件を加味して観測と照らし合わせることで初期パワースペクトルのピーク振幅と波長のパラメータ空間で制限をつけた。本研究で得られた制限は従来の検証手法で探査されていなかった領域に着手するものである。 得られた成果は国内研究会・国際研究会の招待講演及び一般口頭講演、ポスター講演として発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな準解析的モデルの提案、及びその宇宙論への応用という2報の論文を出版した。 本研究テーマに関する内容を主軸に招待講演2件、一般講演3件の学会発表を行った。ポスター講演も1件行った。学会発表では聴衆との有意義な議論が実現し、今後の進展に対して有用な知見を得た。 また、4件の研究会主催実績がある。各研究会で重たい暗黒物質、軽い暗黒物質、宇宙論、標準理論を超える物理それぞれについて関連研究者との議論を行い、特に宇宙論への適用可能性について新たな進展の見込みを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
準解析的モデルの応用を進める。特に、令和4年度に出版した宇宙論への適用論文では、比較的単純な初期条件を仮定したが、この部分をより現実的なものに更新して更なる考察を行う。具体的には、現在有力なインフレーションモデルについて予言される密度揺らぎの構造を反映して構造形成の順解析的計算を行う。 また、特殊な宇宙論的初期条件を仮定した場合については数値計算との比較検討を行う必要がある。初期条件をそろえて計算を行い、構築した準解析的計算スキームの適用限界について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
議論等についてオンラインで作業を進めたため、予算使用の必要性が生じなかった。 論文についても出版費用のかからない出版社から出版したため予算使用はなかった。 2023年度に既に海外での招待講演2件が確定しており、また、2022年度の成果を踏まえた拡張の可能性について海外の関連研究者と現地で研究打ち合わせを予定しており、そのために使用予定である。議論の進展状況から、上記の予定に追加しての海外渡航が見込まれる。
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Research Products
(9 results)