2022 Fiscal Year Research-status Report
ウィルソンラインを用いた高階スピン双対性と超弦理論の研究
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22K14042
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Research Institution | Kushiro National College of Technology |
Principal Investigator |
上床 隆裕 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 講師 (80912427)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 超弦理論 / ゲージ・重力対応 / 高階スピン重力 / 共形場理論 / ドジッター時空 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は,高階スピン双対性の観点からゲージ・重力対応や超弦理論を理解することである.特にウィルソンライン等を用いた解析を通して,3次元高階スピン重力理論の量子効果を詳細に理解したい.2022年度は特にゲージ・重力対応の一種である,dS/CFT対応に着目して研究した. 2022年度の研究成果は主に「ホログラフィーを用いた3次元ドジッター時空の複素鞍点の理解」と「3次元ドジッター時空の高階スピンブラックホールの解析」の2つである. 前者については,3次元ドジッター時空での重力経路積分において,どのような複素鞍点を選ぶべきか?という問題をホログラフィーの一例である,dS/CFT対応の観点から決定する方法を議論した.特に2次元共形場理論としてLiouville理論を用いて具体的に鞍点が決定できることを示した. また後者については,3次元ドジッター時空にブラックホールを導入し,さらに高階スピンのチャージを含むような拡張を議論した.特に反ドジッター時空とのパラメータ対応を明らかにし,その特徴を双対な共形場理論との関係も用いて明らかにした.また,本研究で着目しているウィルソンラインによる解析手法を用いて,エンタングルメント・エントロピー等の量を計算することにも成功した.またこれにより,我々が開発したウィルソンラインを用いた解析を,ドジッター背景の模型に応用できるのではないかと期待される.この方向の進展については,今後の研究で明らかにしたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,高階スピン双対性の観点からゲージ・重力対応や超弦理論を理解することにある.その中でも1年目は,近年提唱されたドジッター時空に関するゲージ重力対応の模型に着目し,3次元高階スピン重力を用いて複素鞍点の決定やブラックホールの構成に関しての理解をもたらすことに成功した.宇宙初期はドジッター時空で近似できると考えられており.ドジッター時空における量子重力を理解することは重要である.これは当初の計画には無かったが,高階スピン双対性を理解する上で重要な模型であり,本研究課題の目標達成に大きく貢献する内容であるため,積極的に研究した.特に本研究課題の1つのアプローチである,ウィルソンラインを用いた解析との相性が良いため,申請者のこれまでの研究と組み合わせることで多くの応用が可能であると考えられる.このように,当初の計画にはない画期的な方向性を見出すことに成功した.
以上のように,2022年度は今後の大きな方向性を提示するような成果が得られたため,本研究課題には十分な進展があったと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で,ドジッター時空の高階スピン重力理論の理解に大きな進展があった.ここで得られた成果をさらに発展させて,高階スピン双対性の観点からゲージ・重力対応や超弦理論を理解することを目指す. まず,ドジッター背景上の高階スピン重力理論について,ウィルソンラインを用いた解析により相関関数の量子効果を評価する.最近.Castroらにより3次元ドジッター時空に結合する物質場の理解が進んでおり,彼らの構成した模型と組み合わせて,我々の開発した解析手法を応用する. また,ドジッター背景上の高階スピン双対性の解析を進める.特にドジッター時空におけるブラックホールの議論を4次元の場合に拡張し,ゲージ・重力対応を理解する.このような拡張が可能であれば,知られている超弦理論との関係から,高階スピン双対性と両者をつなぐ関係式を考察する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により,研究会がオンライン中心になったこと,感染拡大中の出張を取りやめたこと等が理由で,旅費に充てる予定であった額が次年度使用額となった. 次年度の使用計画としては,ノートパソコンの購入費や研究会・学会への出張に充てる予定である..
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