2023 Fiscal Year Annual Research Report
強い電磁場における散乱・放射の素過程の定式化と高エネルギー現象論への応用
Project/Area Number |
22K14045
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田屋 英俊 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 基礎科学特別研究員 (30807970)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 強い場の物理 / 非摂動効果 / 非平衡過程 / 量子電磁力学 / Schwinger機構 / Schwinger効果 / 粒子生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
強い電磁場を系に印加すると系は非線形な応答を見せる。強電磁場中の非線形物理過程は、理論・実験ともに理解がない未開の領域であり基礎的な重要性がある。また、さまざまな極限状況で強い電磁場が現実に生成され、それに伴う非線形物理過程が重要な現象論的役割を果たすと考えられている。さらに、近年の実験的技術の進歩によって、強い電磁場の非線形物理過程を実験室でつぶさに調べる準備が整ってきている。
本研究の目的は、強い電磁場中での非線形物理過程の解明を狙い、強電磁場中の散乱・放射の素過程の定式化を完成させ、その物理的な帰結を明らかにすることである。昨年度までに基本的な定式化は完了していた。今年度は、その定式化を基礎に、(1)さまざまな物理過程への応用と(2)現実の物理系における具体的なシグナルの提案、を研究した。(1)については、強電場中の真空の誘電率の解析とカイラリティ生成への応用を研究し、いずれも論文を出版した。(2)の遂行にあたり前準備として、現実の物理系における強電磁場の時空間配位を定量化する必要がある。今回は、非線形効果の発現が強く期待される、中間エネルギー重イオン衝突実験に着目し、そこで実現される電磁場配位をハドロン輸送模型を用いた微視的な数値計算によって推定し、その推定結果は論文にまとめた。理想的には、この推定結果に定式化を適用することで具体的なシグナル提案まで至りたかったが、これは今年度内には完了しなかった。
研究を総括すると、本研究の最大の目的であった、強電磁場中の散乱・放射の素過程の定式化は、不安定真空中の散乱理論や半古典近似の解析手法を活用することで完成させることができた。この定式化の具体的な物理過程・系への応用も、真空複屈折や誘電率やカイラリティ生成、あるいは、宇宙の再加熱や重イオン衝突など、非常に幅広い過程・系に対して実行でき、さまざまな興味深い結果を得ることができた。
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Research Products
(12 results)