2022 Fiscal Year Research-status Report
高分解能電磁カロリメータを用いたη'中間子の核内質量変化の測定
Project/Area Number |
22K14047
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松村 裕二 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (40916847)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電磁カロリメータ / η'中間子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は大立体角電磁カロリメータを用いてη'中間子の原子核内崩壊の測定を行い、核媒質中でのη'中間子質量スペクトルの変化を調べることを目的としている。 原子核媒質中のような高密度環境ではカイラル対称性の部分的回復に伴ってη'中間子の質量が大きく減少すると予想されており、原子核内部で崩壊したη'中間子の質量スペクトルは真空中のものから変化すると期待される。炭素原子核標的を用いた先行研究では低運動量η'のγγ崩壊の不変質量分布中に質量変化の信号兆候が観測されていたが、統計量が少なく証拠として不十分であった。本年度は未解析のデータを含む高統計の解析を進め、加えて電磁カロリメータの較正法や分解能の評価法などをアップデートすることでデータの信頼性を向上させた。これらの結果は日本物理学会2023年春季大会で報告した。 また、SPring-8/LEPS2ビームラインにおいて、さらなる高統計・高精度な測定のため新たに電磁カロリメータを追加した上でよりセンシティビティの高い銅標的を用いたアップグレード実験の準備を進めた。既存の電磁カロリメータシステムに加え新たにインストールした電磁カロリメータの整備およびデータ収集回路系の構築を行った。本年度1月には銅標的を用いた光子ビームテストを行い、電磁カロリメータ群のコミッショニングデータを取得した。これらのデータに基づき電磁カロリメータ群の動作確認、不良チャンネルへの対処、性能評価などを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
銅標的を用いた本実験の準備においては、電磁カロリメータ群およびデータ収集回路系に当初の想定以上に問題が発生しており、それらの対処に時間がかかっている。前方電磁カロリメータにおいては複数の不良チャンネルが見つかり、光電子増倍管の交換等を余儀なくされた。また、データ収集回路系においてもノイズ対策や故障個所の修繕などで本実験への準備に遅れが生じている。 一方、既存データの解析はおおむね順調に進んでおり、η'->γγ崩壊の解析手法についてのアップデートを行い、学会での報告も行った。本実験のデータが取得できれば速やかに物理解析が行えると期待できる。 以上を踏まえ、全体の進捗状況としてはやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に取得したコミッショニングデータにより電磁カロリメータ群およびデータ収集回路系に残された不良個所などの課題が明らかになっているので、不良部品の交換や修繕などの対策を最優先で行う。準備が整い次第銅標的を用いた本実験のデータ収集を開始する。データ取得後は速やかに較正等の基礎解析を行い、その後η'->γγ崩壊の不変質量解析を進める。
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Causes of Carryover |
実験準備状況の遅れに伴い物品購入を見送ったため。実験準備の進捗に応じて物品購入を進める予定。
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