2022 Fiscal Year Research-status Report
MeVガンマ線天文学を切り拓く超高感度MeVガンマ線カメラの開発
Project/Area Number |
22K14057
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 智法 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD) (90898454)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ガス検出器 / MeVガンマ線 / MPGD |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙MeVガンマ線観測は宇宙の元素起源や暗黒物質の解明にアクセスできる重要な観測領域であるが、この20年もの間、MeVガンマ線検出器の感度は向上しておらず、観測が停滞している。その理由は、従来型のMeVガンマ線検出器のバックグラウンド除去能力とイメージング能力が欠如しているからである。これを解決するためには、コンプトン散乱事象の全ての情報を取得可能な、MeVガンマ線望遠鏡ETCCが有用である。しかし、ETCCでは、コンプトン散乱体として物質密度の小さいガスを用いているため、ガンマ線に対する有効面積が小さいという問題がある。そこで本研究では、コンプトン散乱断面積の大きなガスであるCF4ガスを高圧ガス環境下で運用する「高圧CF4ガス充填式飛跡検出器」の開発を行う。 2022年度の研究では、ガス検出器u-PICとCF4/Neガスを用いた基本特性試験を行った。ここでは、u-PICにCF4/Neガスを充填してガス利得の調査をした。CF4ガス単体では先行実験でガス利得が得られにくいことがわかっていたため、ここではNeガスを添加している。また、比例計数管での試験では、Arガスを少量混ぜることでペニング効果によってガス利得が増加することが知られているため、本実験でも少量のArガスを添加することを試みた。その結果、Ar/(Ne+Ar)の比率で0.5%の添加量で最大のガスゲインが得られることを確認した。1気圧下では電子飛跡を取得するのに十分なガス利得が得られたが、2気圧では得られなかった。高気圧環境下ではガス増幅を引き起こすための電圧が非常に大きくなるが、u-PIC電極に大きな電圧(720V)を与えた際の放電が原因となっていた。そこで、高電圧耐性のある新型TGVu-PICを用いることでこれに対処した。780Vもの電圧を供給しても放電せず、電子飛跡取得可能なガス利得を得ることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究実施計画通りに研究を進めることができたため、おおむね順調に進展しているといえる。従来型のu-PICガス検出器が放電することも予想できており、また、TGV-uPICを使用することこれを対処することもできたことも予想通りであった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究によって、TGV-uPICを使用すればCF4/Ne(2気圧)ガスでも電子飛跡が取得できることを示せた。この結果から今年度はこれをETCC検出器に組み込み、実際にMeVガンマ線に対する有効面積や空間分解能の評価を行なっていく。 現在使用しているTGV-uPICは試験用の小型なものため、ETCCへの組み込みには向かない。ETCC開発に向けて2022年度内に10cm角のTGV-uPICの製作を依頼していたが、生産過程で性能を劣化させる欠陥が発見されたため、2023年度初頭での試験開始が難しくなっている。このTGV-uPICは予定通り、2023年度に納品予定だが、性能劣化の原因を解決するための時間を要する。そこで、2023年度は大学備品である3電極型u-PICでの試験を考えている。この3電極型u-PICに使用されている絶縁体はTGV-uPICと同じものであるため、耐電圧性能が同程度有していると考えており、十分なガス利得が期待できる。また、3電極型u-PICはTGV-uPICよりも電場集中度が高いため、TGV-uPICよりも大きなガス利得が期待できる。まず、3電極型u-PICによるガス利得の試験を行い、TGV-uPICの結果を再現することを確認した後、これを用いたETCCを開発する。
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Causes of Carryover |
2022年度に、10cm角のu-PIC検出素子(ガラスタイプ)を購入する予定であったが、その生産過程で検出器の性能を劣化させる欠陥が発見されたため、納入を見送った。現在では、その原因も特定済みで対処も行なっているため、2023年度にこれを購入予定である。
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