2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K14074
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高棹 真介 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (90794727)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 磁気流体力学 / 星形成 / 降着円盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
降着を受ける星周囲のガスは星が出すX線や紫外線(あわせてXUV)を吸収し、大局円盤に到達するXUV量を減らす役割を果たす。本研究はそのようなガス分布を直接3次元計算を通じて明らかにし、XUV到達量を評価することを目標の一つに掲げている。我々は吸収減光の影響をより正しく計算できるよう、コードのアップデートに注力した。共同研究者の仲谷氏(JPL)の開発した熱化学反応モジュールを私が使用しているコードに移植し、さらに星からの直接光の効果を入れ子格子でも計算できるように対応するというものである。星のXUV直接光は水素原子の電離などを引き起こしてXUVの光学的厚みを変えるため、熱化学反応計算の導入は重要である。モジュールの導入は概ね完了している。 また吸収減光を引き起こすガスがどこから来たか・どういう熱履歴を受けたかについて詳細に調べられるよう、アラバマ大のC. Yangが開発した粒子計算モジュールを応用し、ガスのトレーサー粒子関数を整備した。 回転する磁気圏は円盤と相互作用すると円盤風を駆動し、星の角運動量を抜き取る働きをする。この円盤風は星放射を遮蔽するだけでなく原始星のスピン進化にも重要であるため、スピン進化に関する理論を構築した。結果は査読論文にまとめ、投稿中である。 また今年度に原始星磁場の観測が急速に進展した背景も考慮して、熱対流する原始星表面も計算領域に含めた星・円盤相互作用モデルの3次元シミュレーションも実行した。その結果、原始星磁場が円盤降着を促進する新しい降着モードを発見した。こちらの結果も査読論文として結果をまとめ、投稿準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁気圏降着計算自体の進展には課題があるが、コードに熱化学反応計算モジュールなどを導入したことで、より現実的かつ観測との親和性を高めることができたと考えている。また原始星スピン進化は長年の星形成問題の課題の一つであるが、それにも理論的解決策を提案できるようになった点は進展と言える。さらに最近の原始星磁場観測を考慮してより発展的な大規模シミュレーションを実施し、世界に先駆けて新しい結果を得られた点にも進展が見られる。これらの結果については各種国内外の研究会で発表をしてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
開発を進めているコードの熱化学反応計算まわりのより詳細な検証と高速化をまず進める。そして星表面入りの計算結果に関する成果に関する論文も早急にまとめ、年度の前半のうちに投稿をする。TW Hyaを念頭においたモデルのシミュレーションも進め、星磁場を変えて降着構造や星周辺の密度構造の応答を明らかにする。そして円盤ガスの光蒸発計算に応用できるようなレシピを構築する。星磁場観測を精力的に進めているフランスのグループとの研究交流も進める。
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Causes of Carryover |
わずかな差額は出張費用の変動のため生じた。額が小さいため、翌年度分への使用計画に変更は生じないと現時点で考えている。
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