2022 Fiscal Year Research-status Report
Formation process of stellar streams investigated using N-body simulations
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22K14076
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桐原 崇亘 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (50881728)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 銀河進化 / 恒星ストリーム / 重力多体シミュレーション / 球状星団 / 理論天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河系のハロー領域に観測される帯状の恒星分布(恒星ストリーム)は、銀河系に降着してきた衛星銀河や星団が潮汐破壊されながら形成する構造である。すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ(HSC)やGaia衛星等による近年の銀河系ハローの詳細観測により、ストリームを構成する恒星の分布、軌道、金属量といったその母天体の特性に迫る上で重要な情報が得られつつある。研究代表者による数値計算と最新観測とを組み合わせることで、そのような恒星ストリームの形成過程に迫る。本年度の主な研究実績は以下の通りである。 1) 球状星団NGC5466に付随する恒星ストリームの形成過程に関する研究を進めた。銀河系内における球状星団の軌道運動の数値計算を実施するために、銀河系の重力場モデルを重力多体シミュレーションコードに実装した。複数の母天体モデルおよび軌道モデルで相互作用計算をGPU計算機を用いて実施し、データの解析を行った。また、HSCによる星団周囲の詳細観測をCo-PIとして実施した。 2) NGC5139 (Omega Centauri)と関連する潮汐残骸に関する研究を実施した。(1)で開発した数値計算コードを用いて、現時点でより観測データが豊富なNGC5139の潮汐残骸の形成過程に関する研究を行った。NGC5139は銀河系で最大質量を持つ球状星団として認知されているが、最新の観測に基づく解析で天球面上に母天体の潮汐残骸が広く分布している可能性があることがわかった。その起源天体が球状星団か、矮小銀河か明らかでないが、それらをカバーする複数の母天体モデルを構築して、母天体と銀河系との相互作用計算を実施した。成果については査読付き学術論文誌への投稿に向けて論文を執筆中である。 3) 銀河の潮汐相互作用に加えて、星の相互作用の数値計算も実施してきた。この成果は査読付き学術論文誌に投稿し、現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NGC5139に関する潮汐残骸に関する研究は当初の研究計画にはなかった内容であるが、当初の計画に沿って数値計算コードの整備を行うなかで、開発したコードをそのまま用いて取り組むことができる対象でかつ、現時点でより観測データが豊富な潮汐残骸であったため、その形成過程に関する研究を実施した。本研究で構築した母天体モデルと銀河系との相互作用の数値シミュレーションを様々なパラメータで実行した。この成果については国際共同研究として査読付き学術論文誌への投稿に向けて論文を執筆中である。 当初のNGC5466に関する理論研究の進展はやや遅れ気味ではあるが、来年度にも同天体の詳細観測をすばる望遠鏡HSCを用いて実施する予定であり、観測データの取得状況と合わせながら研究を遂行していく。 NGC5139は当初予定していた対象天体とは異なるが、本研究課題の本質的な目標に則った内容であり、総合して本研究課題の進捗状況についてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、銀河系のハロー中に発見されている恒星ストリームの形成過程を、数値シミュレーションと詳細観測を組み合わせて解き明かすことである。2022年度の代表者による数値シミュレーションを用いた研究で、NGC5139の母天体の潮汐破壊過程について一定の知見が得ることができた。2023年度は潮汐破壊されたNGC5139の母天体の性質に迫るため、母天体の質量, 軌道, 金属量分布についてより高精度なモデル化を行い、銀河系との潮汐相互作用シミュレーションを実施する。同様に、NGC5466についても継続的に数値シミュレーションとデータ解析を実施する。2023年度中にすばる望遠鏡HSCによる当該天体の観測を予定しており、最新観測と数値シミュレーションとを組み合わせることで恒星ストリームの形成過程に迫る。
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Causes of Carryover |
本年度に査読付き学術論文誌に投稿していた論文の掲載費を支払うために、掲載費程度の経費を残していた。しかしながら、当初の想定よりも時間がかかり、年度を跨いだため次年度使用額が生じた。次年度使用額を論文掲載費にあてて、翌年度分として請求した助成金は、研究計画遂行に必要な計算機や研究データを保管するストレージの購入に使用する。また、研究成果の発表や議論のための出張旅費および新たに投稿する論文の掲載費等に使用する予定である。
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[Presentation] 恒星ストリーム形成の理論研究2022
Author(s)
桐原 崇亘, 堀田 彩水, 田中 駿次, 森 正夫, 三木 洋平, 石垣 美歩, 小宮山 裕, 千葉 柾司, 冨永 望, 岡田寛子, 小上 樹
Organizer
GA小研究会
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