2022 Fiscal Year Research-status Report
4-dimensional wavefront reconstruction for laser-tomography adaptive optics
Project/Area Number |
22K14079
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
大野 良人 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (20818017)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 補償光学 / 大気揺らぎ / トモグラフィ / 波面センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では宇宙望遠鏡を凌駕する可視波長域で0.04秒角以下の高空間分解能観測を実現するために、複数のレーザーガイド星とトモグラフィ技術を用いて大気揺らぎを3次元的に測定・補正するレーザートモグラフィ補償光学(LTAO)の性能をさらに向上させる波面推定手法の開発を行う。限られた波面センサーの情報から時間変化する大気揺らぎの影響を高精度で推定するために、これまでの空間3次元に加えて大気揺らぎの時間変化の性質を利用した4次元的な波面推定手法を開発し、すばる望遠鏡用に開発が進められているレーザートモグラフィ補償光学装置での実証を行う。初年度となる2022年度では、主に大気揺らぎの時間変化を調査するための波面センサーデータの取得を行なった。データ取得には、すばる望遠鏡用に開発が進められているLTAO用の波面センサーの試作機と、ハワイ観測所と東北大学の共同で開発された大気揺らぎプロファイリングシステムを用いた。この波面センサー試作機は32x32の副開口を持つシャックハルトマン波面センサーで、すばる望遠鏡で運用されているレーザーガイド星を観測して、その光の波面を400Hzの速度で測定する。試作機は2021年の5月から2022年の11月まですばる望遠鏡の赤外ナスミスプラットフォームで運用された。2022年度は4月と11月の計2回試験観測を行い、波面揺らぎの時系列データを取得した。一方で大気揺らぎプロファイリングシステムは、地表付近の大気揺らぎの高さ分布を非常に細かい高さ分解能で測定することができる。大気揺らぎプロファイリングシステムはすばる望遠鏡の可視ナスミスプラットフォームに設置され、2022年中に計2回のデータ取得を行なった。今後は2022年度の取得した様々なデータから大気揺らぎの時間的変化の特徴を調査し、波面推定手法の開発に進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の最大の目標であった大気揺らぎの時間的な特徴を調べるための波面センサーの時系列データの取得は実施できた。想定していたSCExAOでの取得は制御系の問題でできなかったが、その代わり波面センサー試作機と大気揺らぎプロファイリングシステムを用いて高い空間・時間・高さ分解能をもつ時系列データを取得することができた。もう一つの目的として、アルゴリズムの開発やシミュレーションでの検証を行うための計算環境の構築があった。大規模計算機の調達は時間の都合上できなかったが、現在所持している計算機でも初期の検討が十分行えるため開発の大きな遅れにはつながらない見通しである。一方で、初年度はデータ取得に集中したため、時系列データを解析・大気揺らぎの時間的特徴については次年度から開始する。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の最大の目標であった大気揺らぎの時間的な特徴を調べるための波面センサーの時系列データの取得は実施済みである。今後も引き続き追加のデータ取得を行なっていくが、2年目はデータの解析と計算環境の構築に重きを置く。計算環境については現状の環境でも初期の解析は問題ないため、2年度中により演算能力のある環境に更新できれば問題ない。データ解析は、本研究の核となる時系列データの相関情報から大気揺らぎの時間的特徴を抽出することが目的である。そして、調査した大気揺らぎの時間的な性質を波面再構成手法に応用して、本研究で掲げている空間3次元と時間方向の4次元の情報を用いた波面再構成手法を開発する。最終年度はすばる望遠鏡用のLTAOシステムを用いて、開発した波面再構成手法を検証していくが、LTAOシステムの開発も概ね計画通りに進んでいるため、今の所計画に大きな変更はないと考えている。
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Causes of Carryover |
データ解析・シミュレーションを行うための計算環境の構築を初年度に行う予定であったが、計算機の発注に予想以上に時間がかかることが判明したため、次年度に持ち越した。また、追加のデータ取得に対応するためにデータストレージを購入する。
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