2022 Fiscal Year Research-status Report
木星衛星イオの環境を想定した二酸化硫黄の霜の生成・成長実験および中間赤外測定
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22K14084
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古賀 亮一 名古屋大学, 環境学研究科, 学振特別研究員(PD) (10889190)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 赤外分光 / 結晶成長 / イオ |
Outline of Annual Research Achievements |
木星衛星イオは太陽系において最も火山活動が活発であり、SO2を主成分とした希薄な大気および表面霜に覆われている。先行研究ではGalileo探査機によって地面から放出された赤外光が観測され、特定の波長の吸収スペクトルの幅や深さから表面SO2霜の大きさや疎密がイオの場所によって異なることが明らかにされている。しかし、これらの表面霜の特性と固相のSO2の生成・成長過程の関係は不明である。本研究では中間赤外波長帯における実験室分光測定と観測で得られたスペクトルの比較を通じて、イオの表面や大気に存在するSO2の凝縮・昇華による循環の理解をめざす。本年度では希薄かつ低温の大気、表面霜を実験室で再現し、赤外分光によって表面SO2霜の凝縮・昇華過程のその場測定を行った。 以下の手順で実験を行った。まず、クライオスタットと真空チャンバー、ターボ分子ポンプ、等倍光学系等で構築される実験装置を構築する。実際の実験ではターボ分子ポンプを用いてクライオスタットをイオの大気圧に近い~10-3 Paまで減圧し、デュアー内に液体窒素を注ぐことによってコールドヘッドを90 Kの低温に冷却する。赤外透過ZnSeプレートにSO2ガスを噴霧することで、SO2霜を堆積させる。その後、90 K (イオの夜面や木星蝕中)から120 K(昼面)の間で温度を変化させつつ、測定用の強い赤外光を表面霜に照射した。表面霜によって吸収された光をイメージングフーリエ変換赤外線分光器(2D FT-IR, Qi et al., 2015)で吸収スペクトルを計測した。この実験の成果は天文学会等で口頭発表した。分子動力学シミュレーションを用いた詳細な結果の解釈および再実験は来年度実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
真空低温およびSO2の霜が堆積する環境を再現できる実験装置を完成させることができた。その後、実際に90Kの環境下でSO2の霜を堆積させ、その後二次元の中間赤外透過スペクトルを取得することができ、実験を開始することできた。液体窒素の枯渇を利用して90Kから130Kまでの温度上昇に伴うスペクトルの変化を取得することもできた。しかし、サンプルホルダーに装着した抵抗および電圧コントローラーの不具合により、液体窒素をデュアーに入れたまま温度の上昇と下降を繰り返すことができず、焼きなまし(アニーリング)によるSO2結晶の成長・変性を観察することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
不具合のあった抵抗の配線および電圧コントローラーの修理を行い、再度サンプルホルダーの昇温・下降を繰り返す実験を行い、アニーリングによるSO2結晶の成長・変性を観察する。この実験が成功したのち、本年度行う予定の、重水素ランプを使ったSO2の霜への紫外線照射実験を行い、霜の変性に伴うスペクトルの分布の変化を測定する。堆積した霜の厚さを定量的に評価するため、ガスの導入した量とスペクトルのピーク吸光度の対応関係の評価も行う。 東京大学アタカマ天文台(TAO)望遠鏡は2023年度末運用開始予定である。そのため、イオの中間赤外地上観測は次年度に間に合わないが、観測の詳細な計画を立てて、その次の年度に実行可能になるように準備を進める。過去のVoyagerの観測結果を基に、TAO望遠鏡がイオのSO2表面霜の吸収を観測するのに必要な積分時間を計算する。
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Causes of Carryover |
今年度アジレント・テクノロジー製のターボ分子ポンプとスクロールポンプが一体となった高真空排気セットと同社製の圧力ゲージを110万円で購入する予定であったが、納品が今年度中に間に合わなかったためである。これらの購入を次年度に行い、真空チャンバーに接続する。これによって、真空度を現在よりも高くすることができ、より精度の高いイメージング赤外分光測定が可能になる見通しである。
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[Presentation] Hisaki observation of the oxygen neutral cloud around Io’s orbit before and during the enhancement event of Io plasma torus2022
Author(s)
R. Koga, F. Tsuchiya, M. Kagitani, T. Sakanoi, M. Yoneda, K. Yoshioka, I. Yoshikawa, T, Kimura, G. Murakami, A. Yamazaki, H. T. Smith, F. Bagenal
Organizer
Magnetospheres of the Outer Solar System meeting 2022
Int'l Joint Research / Invited
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