2023 Fiscal Year Research-status Report
氷衛星内部におけるリンの存在状態の解明:生命を育む衛星の形成環境
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22K14086
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 悠里 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (40815164)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 氷衛星 / 内部海 / リン |
Outline of Annual Research Achievements |
巨大ガス惑星の周りには表面が氷で覆われた衛星が存在し、これらは氷衛星と呼ばれる。土星の衛星エンセラダスやタイタン、木星の衛星エウロパやガニメデなどの氷衛星は、氷で覆われた表面と岩石組成のマントル/コアの間に液体の海が存在すると考えられている。このような氷衛星の内部海は、地球外生命生息地の有力候補の一つとして、近年特に注目を集めている。内部海の環境は天体ごとに大きく異なる可能性があり、今後の生命探査ミッションの計画には、液体の水の存在以上の生命存在可能性の指標が必要である。 我々は、少なくとも地球生命には必須元素であるリンが、岩石マントルから内部海に溶出可能かどうかを調べるために、氷天体のマントルにおいてリンがどのような鉱物形態として存在するかを研究した。本研究では、含水コンドライト組成の試料を用いて氷衛星の内部環境を模擬した高圧相平衡実験を行った。昨年度行った実験の生成物をより詳細に分析するために、試料中のリンを含む粒子の断面を集束イオンビーム加工装置で切り出し、透過電子顕微鏡を用いて結晶構造を解析した。また、新たに、組成を変えた実験を行った。炭素や水を多く含む出発物質を用いた実験の生成物を走査電子顕微鏡を用いて分析したところ、細かい針状の複雑な構造が見られた。これらの詳細な分析には、試料の表面の研磨方法を工夫する必要があることが分かった。さらに炭素の量を増やした実験を行う必要性が判明したため、次年度以降、引き続き実験を行なっていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験生成物が予想以上に微細で複雑な構造を持つことが分かったが、新たな共同研究者を迎え、技術提供を受けながら分析を進めることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
炭素の量をさらに増やした実験を行い、リンがこれまで行なってきた実験とは異なる鉱物に入る可動化を調べる。衛星が含有する炭素の量は、周惑星円盤の温度分布と原始惑星系円盤からのガス・固体の供給量とその組成に強く依存すると考えられるため、理論研究も引き続き継続して行なっていく。
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Causes of Carryover |
実験に使用する物品は、別予算で購入したものを本研究にも使用可能だったため、物品費の支出が抑えられた。残った予算は、次年度の研究や国際会議参加の旅費として有効活用する予定である。
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