2022 Fiscal Year Research-status Report
Identification of convectively-driven efficient turbulent mixing hotspots
Project/Area Number |
22K14096
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊地知 敬 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30906128)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 深海乱流混合 / 混合効率 / 対流不安定 / 内部重力波 / 砕波 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球の長期気候変動を強くコントロールする深層海洋大循環を把握するためには、ブラックボックスとなっている深海におけるミクロな乱流混合の全球的な定量化が欠かせない。しかしながら、その進展を阻む大きな要因となっているのが、深海乱流への主要なエネルギー供給源を全て考慮しても、深層海洋大循環を維持するのに必要とされる乱流混合強度の存在を説明することができていない状態、いわゆるMissing Mixing問題である。本研究では、従来、海洋乱流の駆動機構として暗黙のうちに仮定されてきた「シアー不安定」よりも、はるかに効率的に優れた「対流不安定」によって駆動される深海乱流混合のホットスポットを同定することで、Missing Mixing問題の解決を目指していく。 対流不安定によって駆動される乱流ホットスポットの有力候補として、本研究では大振幅の内部潮汐波の励起源を考えている。一年目の本年度は、その代表的な海域であるルソン海峡において過去の国際観測プロジェクトIWISEで取得された大規模乱流データを再解析した。大潮小潮周期をカバーした合計80もの乱流プロファイルを平均して見積もった正味の乱流混合効率は、上層では従来仮定されている20%程度であった一方で、海底近傍では約50%にも及ぶことがわかった。さらに、この対流不安定に特有な高い混合効率が見られた海底近傍では、鉛直スケールO(100) mもの大きな密度逆転を伴う非常に強い乱流イベントが頻繁に観測され、海底で励起された大振幅の内部潮汐波の直接砕波が効率的に優れた対流不安定によって主に引き起こされていることを支持する、期待通りの結果が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに既存の乱流観測データを再解析したことで、海底で励起された大振幅の内部潮汐波の直接砕波が効率的に優れた対流不安定によって引き起こされていることを支持する、期待通りの結果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
ルソン海峡で観測されたような内部重力波が励起して砕破するまでの過程をLarge Eddy Simulation (LES) で再現し、乱流混合効率の計算値と観測値との整合性を検証する。その際、ルソン海峡における内部重力波場をLESによって再現した先行研究を参考に、より観測時の状況に即した数値モデルを構築する。観測と数値計算との比較から数値モデルの有効性を確認した上で、励起される内部重力波の性質を特徴づける背景の流速場・密度場や海底地形を仮想的に様々に変更させた同様のLES実験を実施し、対流不安定によって直接砕波する内部重力波がどのような環境パラメータの下で励起されるのか、効率的に優れた乱流混合が実現するための制約条件を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症が想定ほど収束せず、本年度に予定していた国際学会への現地参加を見合わせたため、国外旅費が発生しなかった。これまでの未使用分は、翌年度の大型計算機の使用料・国内外の学会現地参加旅費・論文投稿費等に予算を充てる予定である。
|